<ロッテ2-1楽天>◇5日◇QVCマリン

 苦労人が意地を見せた。楽天河田寿司捕手(32)が「7番DH」でスタメン出場し、4打数2安打と結果を残した。07年以来5年ぶりの1軍戦だったが、2回の第1打席で二塁内野安打。5回の第2打席でも右前打でチャンスメークし、プロ初の2安打で期待に応えた。常に戦力外を覚悟してきた男が、巡ってきたチャンスをものにした。

 これぞ河田の生きる道だ。2回2死二塁、ロッテ唐川の変化球に食らいついた。打球はワンバウンドし、唐川の頭上を越えて二遊間へ。「ボテボテになったので、一生懸命に走りました」と、180センチ、90キロの大柄な体を揺らして激走した。二塁内野安打。07年10月5日のロッテ戦以来、1735日ぶりにつかんだ安打だった。第2打席でも右前打を放ち、プロ初のマルチ安打で存在感を示した。

 1軍に合流した3日、大久保打撃コーチがこう話した。「もしかしたら、4打席しかないかもしれない。(打てなければ)今日1試合で抹消もありうる。河田の生きざまが見られるよ」。何度もチャンスはない。捕手登録だが打撃力を生かすため、基本はDH起用。腰痛で離脱しているガルシアの実戦復帰も間近、近日中には新外国人が加入する見込みでDH争いは激化する。7年目の32歳。ベテランの域に入る河田は結果を残すしかなかった。

 覚悟はできていた。「本当なら、4、5年前に終わってる選手ですから。毎年、今年で終わりかなと思いながら、ここまで来たので」。戦力外通告と常に隣り合わせだった。それでも野球に取り組む姿勢に加え、人望も厚かった。チーム関係者は口をそろえて「まじめな子ですよ。頑張って欲しいですね」と言い、周囲の期待は高かった。「首脳陣の方から、バッティングを生かそうと言われてきたので、なんとか打てればとやってきました」。プロで生き抜く道を探し続け、もぎ取った2安打だった。

 9回2死三塁、安打が出れば同点の場面では空振り三振し、最後の打者となった。5年ぶりの安打にも試合後は「うれしいはうれしいですけどね。チームが負けたんで」と、リーグ戦再開後初の2連敗に表情は浮かなかった。4年間苦労を味わっても、個人の結果よりチームの結果。それが河田の生きざまだった。【斎藤庸裕】