<オールスターゲーム:全セ4-0全パ>◇第2戦◇21日◇松山

 硬軟自在のパフォーマンスで観客を沸かせたマエケンの独り舞台。ストップをかけたのは、現在パ・リーグ首位打者の日本ハム田中賢介内野手(31)だった。

 3回1死まで、全セの先発、広島前田健の前に、1人も走者を出せなかった全パ打線。8番でスタメン出場した田中の第1打席、カウント2ボール2ストライクからの6球目、148キロの直球を左前へはじき返した。「思い出にはなりましたね」。意地の一打に、大喜びというより、ホッとした表情を見せた。

 派手さより、堅実さ。玄人好みの選手といえる。3度目の球宴出場となった今年は、選手間投票で出場を決めた。これまで4試合に出場して1安打。この日も、5回の第2打席で1死一、三塁の好機に二ゴロ併殺打に倒れ「おいしい場面だな…と思いながら打席に入ったんですけどね」。舞台が華やかになればなるほど、ヒーローになれないところが田中らしい。

 最大のアピールポイントとも言えるバットコントロールは、体調不良さえも吹き飛ばす。6月中旬、原因不明の微熱に悩まされながらも、コンスタントに安打を重ねた。38度の高熱にうなされた18日DeNA戦(札幌ドーム)では、さすがに4打数無安打に終わったが、少々のアクシデントにもぶれない打撃技術で、リーグを代表するアベレージヒッターになった。

 「打てないよりは、打てて良かった。練習もしないし、みんなノホホンとしていて草野球みたいな雰囲気ですよ」。お祭りムードの中、野球を始めた原点の頃を、あらためて思い出していた。【中島宙恵】