<中日6-1巨人>◇15日◇ナゴヤドーム

 竜のエースが巨人の優勝マジック点灯を阻止した。吉見一起投手(27)が6安打1失点の完投で今季9勝目をマーク。負ければ巨人にマジック「36」がつくところを、123球の力投で踏ん張った。強い巨人から今季3勝を挙げているのは吉見だけ。ナゴヤドームでは昨年から13連勝。今日16日もマジック点灯の「危機」に変わりないが、吉見がいる限り、そう簡単に巨人を走らせない。

 強力打線を止めるのはこの男しかいない。1回、吉見はいきなり1死満塁のピンチを背負った。打席には5番村田。慌てなかった。むしろ、集中力を高めた。3球で1ボール2ストライクと追い込み、内角シュートで遊ゴロ併殺。「ホームランだけは、長打だけは避けようと思っていた。1点は仕方ないかなというくらいだった」。最初で最大の危機を乗り越えると、序盤に援護をもらって、9回まで投げきった。

 負ければ7・5ゲーム差となり、宿敵に優勝マジック36が点灯する。しかし、吉見は余計なことを考えず、試合前に「1人、1人抑える。集中していく」と話していた通りのピッチングをみせた。

 吉見

 今日はあまりジャイアンツとか考えないで責任感を持ってしっかり投げようと思っていた。(マジックへの意識は)全然なかった。ジャイアンツに勝ったからと言って他のチームに負けたら一緒。これだけ離されているんで、一戦必勝という気持ちだった。

 ある思いを抱いていた。11日に稲葉光雄2軍投手コーチ(享年63)が急逝。ナゴヤ球場で顔を合わせれば、いつも声をかけられた。「しっかり下(下半身)を使って投げなさい、周りはお前を見て成長していくんだからしっかりしなさいと、いつも言われていた」。負ければ連覇が遠のく試合で、エースとしてどういう投球を見せればいいのか。稲葉氏の言葉をかみしめながらのマウンドでもあった。

 稲葉氏が倒れる直前。本拠地で勝利したときにもらえる「ドアラ人形」を稲葉氏に手渡すことを約束していた。「それが心残りだったんですけど、お通夜のときにお孫さんに渡すことができた」。約束もしっかり守った。防御率1・71。規定投球回に到達し、リーグ4位に躍り出た。一時は左太ももを痛めて出遅れたが、2ケタ勝利まであと1勝。この男がいる限り、巨人に独走は許さない。

 ▼吉見が完投で9勝目。巨人戦は4月19日1失点完投、7月15日7回1失点に次ぎ3勝目(1敗)で、巨人から今季3勝は両リーグで吉見が初めてだ。これで本拠地のナゴヤドームでは今季8戦8勝となり、昨年8月19日広島戦からは13連勝(CSは除く)。ナゴヤドームでは浅尾の15連勝が最多(10年から継続中)で、13連勝以上は99~01年岩瀬13連勝、05~07年中田賢13連勝に次いで4人目。