阪神は23日、西宮市の球団事務所で海外FA権を持つ鳥谷敬内野手(31)と残留交渉を行った。南球団社長、高野球団本部長、坂査定担当の3人がテーブルに着き、約30分、慰留に努めた。球団側は単年バージョンと3年の複数年契約を提示した模様だ。鳥谷は「じっくりと自分で考えますんで、待ってください」と態度を保留したという。

 鳥谷は今年8月に海外FA権を取得したが、自身の去就については「まだ、本当に何も考えていない。どっちに(傾いている)とかもない」と白紙を強調している。球団にもその旨を伝えた模様で、南球団社長は残留の感触について次のように語った。

 「悩んでいるんかな。いろいろと。メジャー?

 だから悩んでいるんでしょ。時間を下さいということ」メジャー志向のある鳥谷に配慮しつつ、本人の返答を待つ姿勢を強調した。また、昨年はFA宣言せずに残留した鳥谷だが、同球団社長は「もちろん、宣言せずにタイガースでやってくれよという要請が一番ですけどね。(宣言残留でも)どちらでもええけど、タイガースに残ってプレーしてくれということ」と力を込めた。

 日本を代表する遊撃手に対して、シーズン中にはインディアンスやツインズなど複数のメジャー球団がネット裏から熱視線を注いでいた。メジャー流出ともなれば、チーム再建を目指す阪神にとっては大打撃だ。白紙状態はどちらに傾くのか。日本シリーズ終了後の宣言期間まで、鳥谷は熟考モードに入ることになる。<鳥谷とメジャー>

 ◆オジーに感激

 03年12月、入団発表で、入寮の際に、メジャーリーガーのビデオ持参を明かした。守備の名場面を集めたスーパープレー集。中でも華麗な守備で「オズの魔法使い」と言われたオジー・スミス内野手の守備に感激。「そのビデオを見るとやる気が出る。野球に対する考え方が変わりますね」。

 ◆弟子入り

 05年から、井口(現ロッテ)と合同で自主トレを行っている。ホワイトソックスなどでプレーした井口から、メジャーのエキスを吸収した。

 ◆初めて公言

 06年12月、イベントにゲスト出演し「何年かして実力がつけば」という条件付きながら「メジャーでやってみたい気はある」と初めてメジャー志向を明言した。

 ◆海外FA権取得

 12年8月21日、海外FA権を取得。「何もまだ考えてないです。(感慨は)全然ない」と話した。

 ◆メジャーから熱視線

 12年シーズンに入ると、メジャー各球団のスカウトらが頻繁に視察に訪れた。パイレーツの編成部長が「守備だけなら、十分に通用する」と評したり、試合開始3時間以上前の練習中、インディアンス、ツインズのスカウトがフリー打撃する鳥谷に熱視線を送ることもあった。