起死回生の同点3ランは、手負いの1発だった。3日の日本シリーズ第6戦(東京ドーム)で左中間へホームランを放った日本ハム中田翔内野手(23)だが、5日、札幌市内の病院で受けた検査で、左手第5中手骨を骨折していることが判明した。

 腫れ上がっていた左手は、重傷だった。先月28日の同シリーズ第2戦で、巨人沢村の149キロ直球が左手甲を直撃。途中交代し、試合中に都内の病院でエックス線検査を受けたが、このときは打撲と診断されていた。この日もエックス線検査の時点では異常がなかったが、MRI検査など精密検査の後に、骨折が判明。球団関係者によれば「死球を受けた時点で折れていた可能性が高い」という。

 打撲だと信じていた中田は、「痛みはある」と言いながらも強行出場を続け、第3戦から4試合連続安打、1本塁打と奮闘した。「よくプレーしていましたね」と驚いたのは、この日診察を担当した医師。それに対し中田は「アドレナリンですかね」と答えたというが、あらためて怪物ぶりが浮き彫りとなった。

 全治まで3週間ほどかかる見込み。今日6日に発表される侍ジャパンの強化試合キューバ戦(16日ヤフードーム、18日札幌ドーム)メンバー入りも内定していたが、直前で白紙となった。今後は札幌市内で経過を見ながら練習する予定でいる。

 今季はレギュラーシーズンとポストシーズンを合わせて全153試合に4番で出場した。最後は日本一の悲願まで手が届かず「まだまだ、終わりたくなかった。日本一になって、栗山監督を胴上げしたかった。自分がもうちょっと打っていれば、違う結果になったんじゃないかなと思う」と、悔しさをあらわにした。リベンジを目指す来季へ向け、まずはしっかりと静養にあてて、患部を治すことが先決。骨折しながら本塁打を放ったという事実はむしろ、他球団の投手を今からびびらせているに違いない。【本間翼】

 ◆骨折と本塁打

 最近では昨年5月14日、巨人亀井が広島戦で本塁打を含む3安打を放ったが、試合前練習で負傷し、翌朝の検査で右手薬指骨折が判明。10年4月14日には、オリックス・ラロッカが右手小指を折ったまま左翼席に運んだ。07年4月19日には、ロッテ・ズレータが小指骨折も1試合2発。06年8月1日には、西武栗山が右手有こう骨骨折のままで本塁打を放っている。巨人小笠原も98年に左手人さし指を骨折しながらプロ初本塁打。一般的には本塁打を打った打席で骨折するか、痛みによる検査ですでに骨折していたケースが多い。