巨人小笠原道大内野手(39)が5日、都内の球団事務所で契約更改交渉を行い、今季年俸4億3000万円から3億6000万円ダウンの7000万円でサインした。10年オフのソフトバンク松中と昨年の横浜DeNA清水直の2億円減を大幅に更新する、球界史上最大のダウン額となった。来年10月に40歳になるガッツは、来季を「ゼロからのスタート」と表現し、再起を期した。(金額は推定)

 覚悟のダウン。しかも、過去に例のない大幅ダウンだった。居並ぶテレビカメラを前に座った小笠原は、サインしたかを問われ「はい、しました」。続いて減額のパーセントを聞かれると「80から90、ダウンです」と、こともなげに言った。「2年やってませんのでね、大方の予想はしてましたけど、契約してもらえるだけ良かったという気持ちで、サインをして、もう来季に頑張ろうという、心一新にして。真っさら状態というか、ゼロからのスタートというか、もう1度スタートを切る感じでやっていきたい」と、むしろスッキリとした表情で話した。

 プロ16年目にして最大の壁にぶち当たった。34試合出場はキャリア最少。打率1割5分2厘は自己ワースト。打点4も最少で、0本塁打は新人の97年以来だった。昨年は68安打で、100安打超えは12年連続でストップ。復活を期した今季だったが、さらなる下降線を描いてしまった。2年連続の不振に、野球協約の減額制限など関係なかった。

 関係者の話を総合すると、シーズン中から下交渉を重ね、単年7000万円で合意した。プロ5年目の00年12月の契約更改で1億円プレーヤーになって以来、はじめての大台陥落。原沢GMは「この2年を考えれば、我々としてはそういう提示にならざるを得ない」と話す。屈辱の1年をガッツは「思い通りにいかないシーズンだったのでね、試合に出られないつらさ、悔しさ、そういうのはずっと感じながら1年を過ごしてました」と言った。

 代打を送られたこともあった。来季の出場機会も確保できていない。それでも、来年も巨人のユニホームを着ることを選んだ。明確な理由があった。「東京ドームの打席に立った時のファンの方々の、たくさんの声援を浴びると、期待に応える、気持ちに応えたいという思いが非常に強かった。何とか来年はそういう気持ちに応えるような働きをしたいなと思っています」。確かに、小笠原の打席では、どの打者よりも大きい、地鳴りのような声援が沸き起こる。WBCが始まるもっと前から「侍」と呼ばれた男は、完全復活を自身に課し、巨人に残った。【金子航】

 ▼小笠原の3億6000万円減はダウン額でプロ野球史上最大。これまで同一球団在籍選手の契約更改では11年松中(ソフトバンク)12年清水(DeNA)の各2億円、他球団移籍では12年山崎(楽天→中日)の2億2000万円が最大額だった。また、同一球団のダウン率84%は03年伊藤(ヤクルト)の88%に次ぎ、巨人では08年野口(1億円→2500万円=75%)を上回る最大となった。

 ◆減額制限

 野球協約第92条(参稼報酬の減額制限)には契約更改の際に年俸1億円を超える選手は40%まで、1億円以下の選手は25%を超えて減額されることはないと定められている。選手本人が同意すれば、制限を超えて減額することができる。