西武小石博孝投手(25)が、電話の受話器を使ったユニークな練習法で、投球フォームの改造に乗り出した。26日、都内のグラウンドで自主トレ。秘密兵器に挙げたのが、どこにでもある受話器だった。電話に出る時のひじの使い方が、理想とする動きと合致。10月に遠征先で購入し、常時持ち歩きながら、電話の度にチェックしてきた。今季は得意の俳句を封印するが、その発想力は健在だった。

 その動きをやってみれば分かるだろう。「はい、もしもし小石です」。電話の受話器を耳元に引き寄せる。その瞬間、ひじは上がりすぎず、下がりすぎずの絶妙な位置をキープする。この高さと角度が、小石の理想型だった。「体重移動の時の自分が理想とするひじの位置と同じだと気付いて。意識付けするには、多少極端でもいいのかなと」。思わず耳を疑ってしまうほどの発想力。投球フォーム修正の秘密兵器は、電話の受話器だった。

 きっかけは、飽くなき追求心からだった。立正大時代も、速球派から技巧派に転身。自身で研究を重ね、球の出どころが見えにくい投球フォームに変えた。昨季終了後、1年間を見つめ直す中で、投球フォームの修正を決意。日常の動作からヒントを探る中、最初に候補に挙がったのは、電車のつり革を持つポーズだったが「あの姿勢だと、ひじが上がりすぎるので」と却下。ひらめいたのが、電話する姿だった。

 受話器との出会いも劇的だった。昨年10月にオーストラリアのウインターリーグに参加。チームメートと訪れた洋服店の雑貨コーナーで、携帯電話に接続して使う受話器を発見した。「最初は面白いなと思ったんですけど、すぐに使えるじゃんと思った」と発想を転換。値段は5000円で、即購入した。「意識しすぎたら、変なところに力が入っちゃいますけど、これだと自然にできる」と効果を実感。時に上がり過ぎだった左ひじは、理想とする高さに近づいてきた。

 春季キャンプは昨季に続き、1軍に相当するA班スタート。新人だった昨年は、趣味のケーキ作りや俳句で注目を浴びたが、今季はグラウンドでの結果にのみ、こだわる。「去年は貢献できなくて、申し訳なかった。今年はどんな形でも、チームの勝利に貢献できるように頑張ります」。受話器をボールに持ち替え、マウンドでのフル回転を誓った。【久保賢吾】<小石アラカルト>

 ◆生まれと球歴

 1987年(昭62)4月13日、大分県生まれ。鶴崎工、立正大、NTT東日本を経て、11年ドラフト2位で西武に入団。

 ◆サイズと血液型

 177センチ、85キロ。左投げ左打ち。血液型A。

 ◆趣味

 ケーキ作り。立正大時代にインターネットのサイトを参考にレアチーズを作ったのがきっかけ。部員の誕生日会などでプレゼントした。

 ◆特技?

 俳句。鶴崎工時代に「伊藤園

 お~いお茶

 新俳句大賞」に応募。各都道府県で5人選出される「都道府県賞」を受賞した。プロ初勝利のお立ち台でも詠んだが、今季は封印を決めた。