虎の黄金ルーキーは肝っ玉もデカイ!

 阪神宜野座キャンプ初日にドラフト1位藤浪晋太郎投手(18=大阪桐蔭)がブルペン入り。和田監督ら首脳陣、ファンら200人以上の視線を集めたワンマンショーにも「気になりません」と動じなかった。

 沖縄の日差しが、パッと明るくなった。投球練習を終えた投手陣がいなくなったブルペンに藤浪が現れた。ファン、報道陣合わせて約200人、テレビカメラ14台が、18歳の一挙手一投足に視線を注ぐ。捕手清水の後ろには和田監督ら首脳陣がズラリ。宜野座キャンプ初日のメーンイベントが幕を開けた。

 スラッとしたタテジマの19番がセットポジションからゆっくりと左足を上げると、見守る誰もが息をのむほどの緊張感に包まれた。主役はそんな視線にも動じない。集中した真剣な表情のまま、すっとその力を解き放つと、バシッとミットから快音を響かせた。注目を力に変えられるのか。甲子園春夏連覇の怪腕は、30球のワンマンショーを堂々と演じきった。

 「見られているという意識はありましたけど、甲子園とか、球場で投げればもっと多いですし。気になりませんでした」

 周りを気にしないで投げさせたいという首脳陣の配慮だったが、むしろ華々しくスポットライトを浴びる形となった。見守った和田監督は「堂々と、1球1球感触を確かめるように投げていた。頼もしく見えた」とうなった。投内連係練習を見学していたグラウンドでは、指揮官が歩み寄り「練習では失敗したらいい。思い切り失敗して、それでマウンドに行けばいい」と、船出の日に助言していたが、順風そのものだった。

 初任給で両親に送ろうと決めているプレゼントは多忙でまだ用意できていない。「落ち着いたら、何かプレゼントするから」と約束し、沖縄の地に乗り込んだ。母明美さん(48)はこの日の様子をテレビニュースで見ていた。「元気そうでよかった。それが何よりのプレゼントですね」。大阪から遠く離れた沖縄の息子を思いやった。

 2日目もブルペン入りの予定。自主トレ開始から初の連投も「自分としては大丈夫」と望むところだ。捕手を座らせるのは、中西投手コーチがあらためて「10日以降」と明言。開幕を見据え、焦らず調整させる。

 午前10時から、ウエートトレーニングまで約8時間のキャンプ初日を走り切った。表情に疲れや戸惑いはなく、希望が満ちていた。「ユニホームを着て練習するのは初めて。プロになるという実感をあらためて感じました」。虎の未来を照らす壮大な藤浪伝説が幕を開けた。【山本大地】