ブランコの後釜候補が巨人、阪神の「007」をびびらせた。中日の新外国人マット・クラーク内野手(26=パドレス3A)がキャンプ初日に屋外フリー打撃で55スイングし、9発の柵越え。ライバル球団のスコアラーを驚かせた。サポート役の元中日アロンゾ・パウエル氏(48=パドレス打撃コーチ補佐)もイチ押しの左の大砲。大志を抱く博士かスーパーマンになる!?

 ブランコのいない沖縄・北谷球場に、夢のアーチがかかった。竜党に球春到来を告げたのはメジャー経験のない未知の大砲クラークだ。ノンステップから長いリーチを生かしたスイングは見ている方がワクワクする豪快さ。両翼98メートルの球場で、右翼防球ネットの中段に突き刺さる推定130メートル弾まで飛び出した。

 26歳のパワー自慢は「初日にしては良かったかな。右方向の打球?

 すごかったかい?

 まあ、ホームランの数は関係ないよ」。サラリと言っても、9本のフェンスオーバーは20選手のうちで最多だった。

 ライバル球団のスコアラーがくぎ付けになった。巨人三井編成本部統括ディレクターは「両脇が締まっていて振幅も少ない。化けるとすごい選手になる」と警戒。実はG軍もクラークを助っ人候補にリストアップしていたという。阪神嶋田スコアラーも「飛ばす力はすごい」と長距離砲としての素質を認めた。

 お目付け役で3年連続首位打者のパウエルがいるのが心強い。「彼はチームを引っ張っていける」と話すように、実力だけではなく性格も二重丸のようだ。グラウンドではジャパニーズドリームをつかむ秘訣(ひけつ)まで伝授。(1)何事にも耐える(2)学ぶ姿勢を忘れるな(3)恥を忍んでチャレンジしろと、3カ条を挙げた。5日まで滞在する師匠は、クラークにとってはありがたい後見人だ。

 注目の初実戦は早ければ5日韓国・ハンファ戦(北谷)。高木監督も「実際の球を打ってどうか」と慎重に見極める構えだが、実戦のアピール次第ではレギュラー争いに名乗りを上げてきそうだ。空を見ろ、鳥だ飛行機だ、クラークの打球だ。打席でスーパーマンに変身するC砲が、ブランコの去った北谷キャンプを熱くする。【桝井聡】