阪神福留孝介外野手(35)の声が宜野座球場、室内練習場に響き渡った。「もう年だ!

 年齢を感じるわ!」。全体練習終了後、すでに主力はほとんど球場を去っていたが、バットを握ってカーブマシンと向き合った。居残りの132スイング。本人の言葉とは裏腹に、カウントアップされたスイング数はついに501を数えた。

 初めてタテジマの背番号「8」をまとったキャンプ初日、本人は「似合わんな」と苦笑いしたが、練習では福留らしさが満載だった。注目のフリー打撃では99スイング中、44本が安打性の当たり。そのうち8割が中堅から左方向への打球だった。首位打者を2度獲得した確実性を虎ファンの前で披露した。

 一方で右翼席への柵越えも3本を数えた。「あんまり気にならなかったですね」。初めて打った統一球にも違和感はまったくなし。確実性とパワーを兼ね備えたスラッガーが6年ぶりに日本球界に戻ってきた。

 シートノックでは初日から右翼に入り、安定感を見せつけた。練習の合間には鳥谷、大和らと積極的に交流した。表情は新天地での決意と希望に満ちていた。

 2月1日-。野球選手にとって正月と言われる日の朝、福留は西の空に向かって祈りをささげる。プロ1年目の99年、キャンプ初日に祖母ヤエさん(享年78)が逝去した。「オレの野球を本当に応援してくれていた人。オレが野球をすることで喜んでくれると思う」。当時も気丈にメニューをすべてこなした。故郷・鹿児島から見守ってくれる祖母の命日は、毎年、気持ちを新たにしてくれる。

 「きょうは飛ばしすぎないようにと思っていた。(スイング数は)少ないですよ。500?

 まだ、まだ。掛ける4!」

 球場を去る間際、そう言ってにやりと笑った。衰え知らずの35歳が、新天地で新たな1歩を踏み出した。【鈴木忠平】