<練習試合:阪神1-1オリックス>◇2日◇高知・安芸

 速球、変化球、立ち居振る舞い…。すべて一級品の衝撃デビューだ。阪神ドラフト1位藤浪晋太郎投手(18=大阪桐蔭)が2日オリックス戦でプロでの実戦初登板。最速145キロの速球と変化球のキレで、2回を無失点で滑り出した。毎回先頭打者の出塁を許したが、T-岡田から空振り三振を奪うなど落ち着いていた。新人離れした30球で、目標とする開幕ローテーション入りに力強く踏み出した。

 藤浪にいきなり試練が襲いかかった。プロ初実戦マウンドは先頭坂口に内野安打。安達に四球を与えて無死一、二塁。絶体絶命で10年の本塁打王・T-岡田を迎えたが、ここからが並の新人とは違った。

 表情からは、余裕すら見えた。初球、左打者封じの「伝家の宝刀」がズバッと決まった。カットボールをここしかないという内角低めに投げ込み、空振りを奪う。2球目は外へのフォークでタイミングを外して空振りさせた。あっという間に追い込み、3球目。むだ球はなし。内角低めへのカットボールを再び完璧に決め、3球で空振り三振に仕留めた。

 「自分の狙ったところにいいボールを投げられたので、T-岡田さんがどうというよりも、そこに投げられたのが良かった。三振を狙いたい場面で、三振を取れてよかったです」

 狙って刻んだKマーク。後続も断ち、三塁まで進まれた2回もホームは踏ませなかった。堂々の2回0封発進。「決まった球はそう簡単に打たれない」と確かな手応えを胸に刻んだ。

 自慢の直球もうなった。坂口へのプロ1球目がこの日最速の145キロ。2回2死三塁で斎藤にも初球で最速を投じた。気温10度を下回る中で、上々の仕上がり。長年阪神1軍がキャンプを張った地に詰めかけた約3000人も拍手喝采を送る初陣だった。

 昨年9月中旬、大阪桐蔭の寮の一室で、面談が行われた。藤浪は父晋さん(49)に対して「プロに行きたいです」と意志を伝えた。大学進学を望んでいた晋さんも、強いることはしなかった。「自分で決めたのだから、しっかりやれよ」という父の願いが込められた。家族で旅行に出かけたのは、藤浪が小6だった6年前。東京ドームで野球観戦し、ディズニーランドで夢のひとときを過ごしたのが最後。楽しみを我慢し打ち込んできた野球で、ここまで登りつめた。

 完璧ではないが結果は「0」だった。これが「勝てる投手」を目指す藤浪のスタイルだった。このままいけば、次回登板は9日日本ハム戦が有力。大阪桐蔭で無敵を誇った甲子園のマウンドで、3回を投げる見込みだ。はじまりは維新の地、高知から。猛虎復活の旗印となるべく男が、確かなスタートラインに立った。【山本大地】