<巨人8-6中日>◇7日◇東京ドーム

 中日谷繁元信捕手(42)が、プロ野球記録となる25年連続本塁打をマークした。巨人戦の2回に内海から左翼へ1号ソロ。野村克也に並び歴代トップに立った。自身が持つ新人からの連続シーズン本塁打記録も「25」と更新。前人未到の記念弾は、天国の恩人にささげるアーチでもでもあった。

 メモリアル弾がレフト席前列に飛び込んだ。2回1死。谷繁は内海の4球目、低めカーブをバットのヘッドを利かせてすくい上げた。捕手らしい配球を読み切った技ありの1発。88年のドラフト1位で大洋(現DeNA)に入団して以降、毎年マークしてきた本塁打は、捕手の大先輩・野村と並び球界トップに立つ25年となった。

 谷繁

 特にコメントすることはないです。ホームランバッターではないですから。毎日毎日、打ちたいとか、勝ちたいとか、そう思っていた結果が積み重なったということ。

 通算657本塁打の野村に対し、谷繁はこの日222本塁打。自ら言うように決して長距離砲ではない。この鉄人記録を支えてきたのは人一倍、強い身体と精神力。そんな男を陰から支えてきたのがDeNAのチームドクターを務め、今年2月に肺がんのため亡くなった横浜南共済病院の山田勝久名誉院長(享年81)だった。

 横浜時代はもちろん、中日にFA移籍した02年以降も交流は続いた。20年以上も谷繁の身体を診てきた大恩人だ。最後に会ったのは2月のキャンプ直前だった。入院する院長を見舞った谷繁は「早く1本打つから、まだ死なないでくれ」と声を掛けたという。

 谷繁

 喜んでくれる?

 そうだな…いや、院長は喜ばない。2本目のヒットの方が喜んでくれる。1月に会ったときは「谷繁君!

 もっと右に打たないと」って言ってたから(笑い)

 この日は4回に右前打を放ち今季4度目のマルチ安打を記録。2000安打まであと21本とした。

 ただ、一塁への走塁の際に左太もも裏に違和感を感じ、大事を取って交代。「途中交代というのが一番情けない。もう大丈夫。また(試合がある)明後日から頑張ります」と悔しさをにじませた。立ち止まることをしない働き盛りの42歳。天国の院長はきっと笑顔で見守っているはずだ。【桝井聡】

 ▼谷繁が今季1号を放ち、プロ1年目の89年から25年連続で本塁打をマークした。25年連続本塁打は、56~80年野村(西武)に並ぶプロ野球タイ記録。野村はプロ3年目からで、プロ入り25年連続本塁打は初めてだ。野村は20本以上が18度あり、2桁本塁打も21度に対し、谷繁の20本以上は01、02年の2度だけで2桁は8度。06年からは1桁が続くものの、1発を毎年打ち続けている。