<楽天1-5ソフトバンク>◇17日◇Kスタ宮城

 好投は報われなかった。楽天上園啓史投手(28)が先発。昨年4月5日以来1年ぶりの1軍登板で、5回2/3を3安打2失点。試合をつくったが、打線の援護がなく移籍初勝利はならなかった。それでも、真っすぐに力があり、次に期待を持たせる投球だった。4連敗と苦しむチームに、明るい材料だ。

 ありったけの力を振り絞り、上園は敵の4番と向き合った。0-0の6回2死一、三塁。ソフトバンク松田への初球フォークは、外に外れた。2球目、3球目と思い切って懐を攻め、続けて空振りを奪う。勝負の4球目。フォークをファウルでしのがれた。一転、直球を2つ続け、フルカウント。7球目。再び低めにフォークを落としたが、振らせることはできなかった。

 四球で満塁とし、左打ちのラヘアを迎え降板を命じられた。ベンチで祈るように見守ったが、2番手の左腕金刃が決勝の2点打を打たれた。上園は「結果、負けたんで粘りきれなかったです」と責任をしょい込んだ。それでも、荒れ気味の直球には力があった。3回からは3イニング連続で3者凡退。1年のブランクを感じさせなかった。

 期するものがあった。阪神から移籍1年目の昨季、開幕ローテに入った。開幕6戦目のソフトバンク戦に先発。5回途中まで投げたが、3失点で負け投手になった。2軍落ちし、そのままシーズン終了。昨秋には右肘を痛め、2年目キャンプは2軍で迎えた。

 チャンスはやってきた。同じ先発の釜田が不振で、この日、2軍落ち。2軍で結果を出していた上園に白羽の矢が立った。くしくも、相手は同じソフトバンク。登板前日の16日「気持ちだけは切らさないようにやってきました。まだこのチームに貢献していないので、しっかり投げたい。この1年は長かったけど、とにかく良い投球をしたい」と静かに闘志を燃やした。

 チームは4連敗。開幕当初の好調とは懸け離れている。暗くなりがちだが、星野監督は「よく頑張った。合格点」と、上園の話題には声を弾ませた。上園は「まだ勝ちに貢献していない。残念です」と悔やんだが、また登板機会はある。「貢献したい」という純粋な願いを、次こそ、かなえてみせる。【古川真弥】