<中日11-4巨人>◇29日◇ナゴヤドーム

 緻密だった巨人の歯車が、微妙に狂い始めている。象徴的だったのは6失点につながった6回の守りだ。1死一塁から、井端にランエンドヒットを決められた。初球のカーブ。二塁のカバーに入ったのは遊撃手の坂本だった。井端の打球は、坂本がいた遊撃定位置をコロコロと抜けていった。

 勝呂内野守備走塁コーチは「球種を見て、どちらが入るか決める。(右打ちのうまい)井端だから遊撃手というわけではない」と説明したが、それならば、右打者の井端が左方向に打球を飛ばしやすいカーブという球種で、カバーには二塁手が入るべきだった。

 さらに続く1死一、三塁で打者、荒木を迎えた場面では、セーフティースクイズの構えを繰り返す相手の揺さぶりに負けた。「状況的に重い1点。2ボール、3ボールまでは勝負だった」と原監督。カウントを悪くし、最後は「相手が何か仕掛けてきてくれればラッキー」と3ボール1ストライクから、ウエストを指示した。

 ちょっとした賭けは外れ四球。満塁で首位打者のルナと勝負しなくてはならなくなった。原監督のウエストの指示は驚異的な確率で当たると、チーム内でも評判だったが、この日は、その神通力もなかった。1点差だった試合は、一気に形勢が決まった。

 結局11点を失った。2ケタ失点は11年9月3日のヤクルト戦以来。4点差を逆転されるのも、昨年は1度もなく、11年4月29日の横浜戦以来の屈辱だ。打線を組み替え、初回はいい滑り出しに見えた試合だったが、終わってみれば4連敗。その間、投打のかみ合わない試合が続いている。

 「主導権を握りながら、逆に相手に渡してしまった。11点取られたら、12点取らなければいけない。それぞれが反省する。教訓にするというところですね」。まだ、指揮官の声に悲痛さはない。立て直しの時。開幕ダッシュの貯金が、ここで生きるはずだ。【竹内智信】