<広島11-6中日>◇12日◇マツダスタジアム

 中日谷繁元信捕手(42)が、史上3人目となる2球団での1000安打を達成した。4回2死一、三塁で一塁後方に落ちるタイムリー。8回には3号ソロも放つ今季初の猛打賞で、史上39人目の通算1000打点にもあと2に迫った。チームは記念日を飾れず、1日で最下位にUターン。だが明日14日開幕の交流戦(対日本ハム、ナゴヤドーム)でもこの男が大奮闘、守道竜の浮上を導いてくれるはずだ。

 新たな金字塔を打ち立てても、谷繁に笑顔はなかった。厳しい表情でバスに乗り込んだ。投手陣は満塁弾を2発浴びるなど今季最悪タイの11失点。連勝は3で止まり、1日で最下位に逆戻り。常々「捕手だから勝つことが一番の喜び」と話す男を支配していたのは悔しさの感情だけ。到底、達成感には浸れなかった。

 史上3人目、2球団での1000安打は4回に出た。1点リードで2死一、三塁。広島中村恭の内角143キロに詰まりながら、一塁後方にポトリと落とした。プロで25年生き抜いてきたしぶとさを象徴するタイムリーだった。2球団での大台到達は過去2人だけ。だが広報を通じ、少し控えめに充実感を表現した。

 谷繁

 いいところに落ちてくれました。2000本と一緒であんまりピンとこない。でも横浜で1000本、ドラゴンズで1000本という数字を見れば、両チームに少しでも貢献できたのかなと思っています。

 弱かった横浜を入団10年目に日本一へ導いた。FA移籍した中日でも4度のリーグVと日本一。2球団の栄光の歴史には捕手としてだけでなく、バットでコツコツ積み重ねた貢献も欠かせない。その象徴が過去38人、あと2まで迫った通算1000打点だ。単純計算すれば2000安打の半分が、得点を運んでいる。通算打率は2割4分台でもここぞの1本、無類の勝負強さでチームを助けてきた。

 「最後まであきらめない。その気持ちで打ちました」。1点を追う6回には今井から中前打を放ち、クラークの同点打を呼んだ。6点差をつけられた8回は小野から左翼へ3号ソロ。大差でもネバーギブアップの初猛打賞で、仲間を鼓舞し続けた。通算安打は横浜で1002本、中日でも1002本と並んだ。2000安打に続いて記念日は飾れなかったが、尊い数字だ。明日開幕する交流戦もこの男が引っ張り、竜の浮上を導くはずだ。【松井清員】

 ▼谷繁が4回に右前打を放ち、中日移籍後の1000安打目を記録した。谷繁は横浜時代に1002安打をマークしており、2球団で1000安打以上は、大杉(東映・日拓・日本ハム1171本、ヤクルト1057本)金本(広島1179本、阪神1360本)に次いで3人目だ。横浜時代は1416試合目で1000安打したが、中日では1390試合目に1000本打った。なお、この試合で中日は42歳の谷繁と40歳和田が本塁打。40代のアベック本塁打は10年8月25日阪神の金本と桧山以来2度目。