<DeNA3-7楽天>◇14日◇横浜

 マー君で、楽天が鬼門の初戦を突破した。交流戦の開幕戦で、田中将大投手(24)が8回7安打3失点で6勝目を挙げ、昨季からの自身の連勝を10に伸ばした。球速は自己最速タイの155キロを計測した。終盤に失点を重ねたが、援護にも恵まれ、同球場では初勝利。楽天の投手で初めて、12球団の全本拠地勝利を果たした。2年連続交流戦負け越し中のチームに白星スタートをもたらした。

 エースは感情をむき出しにした。7回に続き、8回にも失点。1死二塁で、DeNAブランコに左中間フェンス直撃の二塁打を打たれ、3点目を失った。2回に先制ソロを許した大砲に、またもやられた。8回3失点にまとめはしたが「点を取られること自体、納得できません」。ベンチに下がると、右拳を背もたれに激しくぶつけた。軟らかいクッションカバーがついているとはいえ、思わず利き腕で暴れるほど高ぶった。

 1回は、150キロ超の直球を軸に3者凡退に仕留めた。「全然、悪かった。それが分かっていたから、慎重に、しっかり投げようと思いました」と切り替えた。2回に1点を失ったが、3回以降は得点圏に走者を背負っても点は与えなかった。だが、7回1死から石川にストレートの四球を与え、2死一塁で代打後藤に右中間二塁打を浴び、2点目を失った。四球からの失点に首を振った。

 それでも、最後に手にしたのは白星だ。帰りのバスに向かいながら、自ら話題を変えるように口を開いた。「勝ったから良いんです。勝ったからOKです」と、声のトーンを上げた。チームは過去2年続けて、交流戦で4つの借金。今季は貯金1の3位と、好調を維持してセの本拠地に乗り込んだだけに、チームにもたらした結果を重く見た。

 田中自身にとっても、メモリアルな1勝となった。2年ぶりの横浜スタジアムで初勝利を挙げた。これで、12球団の全本拠地で勝った。それぞれ条件の異なる12のマウンドで勝つのは、かつてのエース岩隈(現マリナーズ)もなしえなかったことだ。DeNA投手陣からは「ここのマウンドは軟らかい。上から投げる投手には、投げにくいかもしれない」との“証言”もある。だが、田中は普段は投げないマウンドにも、問題は「全然(なかった)」と動じることはなかった。

 適応力がある。コンディショニング担当の星コーチは「投手によっては、マウンドが合わないと球速がガクッと落ちる。田中には、それがない。下半身が合わなければ、上体で調整できる」と指摘。この日は全128球のうち、150キロ超が33球と4分の1を超えた。田中本人は「ここのスピードガンは出るんです」と気にも留めなかったが、最速は自己ベストタイ155キロを計測。敵地の形状に応じられる柔軟性が、エースの武器でもある。

 星野監督は「7点取ったら完投してくれないと」と注文を忘れなかったが、苦手の交流戦を勝って滑りだした事実は揺るがない。田中は「交流戦の最初を勝ったからOK」と、三たび繰り返した。【古川真弥】

 ▼田中が両リーグトップの6勝目を挙げ、昨年8月26日日本ハム戦からは10連勝。田中の開幕6連勝は09年(7連勝)に次いで2度目。パ・リーグで開幕6連勝以上を2度は、近鉄時代の88年とオリックス時代の05年に記録した吉井以来、11人目だ。これで田中は内海(巨人)に並び5位タイの交流戦通算18勝目。交流戦ではまだ6敗しかなく、勝率7割5分は交流戦通算15勝以上の投手では杉内(巨人)の7割3分3厘を抑えて最も高い。また、横浜スタジアムでは初勝利となり、12球団の本拠地球場すべてで白星を記録した。