<巨人3-5ロッテ>◇14日◇東京ドーム

 巨人がみすみす勝利を手放した。9年目を迎えた「日本生命セ・パ交流戦」が14日、セ・リーグ本拠地で開幕した。セ、パ首位決戦は、巨人が3点リードの6回1死二、三塁から、守備のミスで流れが変わった。杉内が投ゴロに打ち取った打球を三塁に送球し、三本間に走者を挟んだが、村田が深追いして生還を許してしまう、という極めて珍しいミスが出た。8回にはセットアッパー山口が4安打3失点で逆転を許し、開幕戦を落とした。「やってはいけないプレー」をやってしまった巨人が勝利の女神に見放された。

 こんなことになるとは、だれも思わなかっただろう。6回1死二、三塁。ロッテ加藤の打球は投ゴロとなった。そして、ゴロゴーのサインでも出ていたのか、三塁走者のサブローが飛び出した。巨人川相ヘッドコーチは「ラッキー」と思ったという。だが、そこからのプレーが、この日の試合の流れを大きく変えてしまった。

 打球を処理した杉内はサブローを追い込みながら、三塁手の村田に送球した。きびすを返して本塁へ走りだした走者。村田はタッチにいったが届かない。そのまま本塁に向かって追いかけたが、距離は縮まらない。走者を挟んでいたはずの阿部にも、カバーに来たロペスにも投げられない。サブローが、本塁を走り抜けると、オレンジのため息と黒い歓声が入り乱れた。

 村田

 追いすぎました。セオリーでは、捕手に追ってもらわないといけなかったが、(阿部が)サブローさんと重なってしまった。早めに投げないといけなかった。追いつくと思ったけど、追いつけなかった。1つアウトを取らないといけなかった。

 阿部

 野手がミスをしてムダな1点をあげてしまった。

 プレーに関わった各選手からは反省の弁が相次いだ。3点リードを奪い、試合の主導権を握っていた。ピンチを招いたものの、この投ゴロで切り抜けられる計算が立ちそうなところだった。そこにわずかな隙が生まれてしまった。取られるはずのない1点。通常の失点以上に重く響いた。

 川相ヘッドコーチは、ミスを重くとらえた。「基本プレーをしっかりやらないと、僅差では響く。普通にアウトにできたプレーだった。いけないプレーだ。27個のアウトを1つずつ、しっかり取っていかないといけない」とバッサリ。このプレーで失った試合の流れを巨人は取り戻すことができなかった。

 挟殺プレーのミスについての質問に、原辰徳監督(54)は「やっぱりね。なんというか…。2点取った裏の守備。得点の後は大事なんだけど、杉内も乗り切れなかった。杉内のリズムにならなかったですね」と、プレーそのものではなく、試合展開を振り返った。紅潮した顔をおしぼりでぬぐった。悔しさを押し殺しているようだった。たった1つのプレー。巨人が、あらためて野球の怖さを知った。【竹内智信】