右肘の違和感を訴えていた中日吉見一起投手(28)が21日、手術が決まり、来季開幕も絶望的となった。球団が「内側側副靱帯(じんたい)の再建術」を6月初旬に受けると発表した。トミー・ジョン手術と呼ばれるもので、過去の同様の手術では復帰まで1年以上を要すとされる。5年連続2ケタ勝利の絶対的エースは今季絶望どころか、来季開幕にも間に合わない見通しとなった。

 中日の絶対的な柱・吉見が来季開幕さえ絶望的となった。衝撃的なその選択と離脱期間だ。松坂ら多くの投手が受けた通称トミー・ジョン手術。復帰まで1年以上を要すとされる。

 高木監督はほっともっと神戸での練習後、今季中の復帰は無理かという質問に「そう聞いている」と話した。それどころではない。吉見の右肘手術は社会人時代も含めこれが4度目だが、靱帯(じんたい)にまで及ぶ大がかりなものは初めてとなる。

 昨年9月に右肘の肘頭骨棘(こっきょく)骨折で離脱した。この際は手術せず保存療法を選択した。WBC日本代表候補は辞退したものの、今季は開幕投手でスタートした。その後も試合中に右腕にしびれや力が入らなくなる症状が出た。5月8日に2度目の出場選手登録抹消。複数の病院で入念に検査し、今後の野球人生を考えて大きな決断を下した。

 この日、ナゴヤ球場で軽めの調整を行った吉見は「オペをすることは事実です。いろんな先生の話を聞いて(保存療法では)同じような症状が出る可能性が高いと言われました。目先のことより、1年でも長く野球をやりたいので」と話した。エースと選手会長としてチームに貢献できない無念さもにじませた。

 開幕からなかなか調子の上がらない守道竜にとっては大打撃だ。5年連続2ケタ勝利と確実に勝ち星を計算でき、完投能力まで備える大黒柱。ここ一番で頼りになる吉見の代役は見当たらない。すでに先発、中継ぎと駒不足でやりくりに苦しんでいる上に、最大級のショックに見舞われた。

 ◆吉見の右肘手術

 社会人トヨタ自動車在籍時の04年12月にクリーニング手術を受けた。実戦復帰は05年5月。同年秋にドラフト希望枠で中日入りした。プロでは10年11月に遊離軟骨除去手術を受けた。同年12月の再手術も含め2度メスを入れ、実戦復帰は11年3月。この年は18勝3敗と圧倒的な成績でリーグ制覇に貢献した。

 ◆トミー・ジョン手術

 損傷した肘の靱帯(じんたい)を切除し、他の箇所から採取した正常な腱(けん)を移植して修復を図る。74年にフランク・ジョーブ博士によって考案され、トミー・ジョン投手が初めてこの手術を受けた。正式名は側副靱帯(じんたい)再建手術。現在はメジャー投手の9人に1人が同手術に踏み切るといわれるほどで、おととしのデータでは同手術からメジャー復帰登板までに要した日数平均は394日(1年と29日)。国内では巨人久保が12年5月に受け復帰を目指している。