<巨人4-1中日>◇21日◇上毛敷島

 これが阿部だ。巨人阿部慎之助捕手(34)が、リーグ戦再開を2打席連続本塁打で飾った。ともに追い込まれてからの変化球を右翼席上段へ。完璧な2つのアーチを前橋の夜空に架けた。自ら「重要」と位置づけるオールスターまでの1カ月。そのスタートとなる一戦で存在感を見せた。チームは5連勝で、貯金16とガッチリ首位固めだ。

 並外れた集中力があった。阿部は追い込まれ、直球を待つ比重を多くしながらも、甘く入った変化球に全身で反応した。2回の1打席目はシュート。4回の2打席目はフォーク。6試合ぶりの17号&18号は、スイングの形、打球、すべてが理想型だった。「完璧だったね。追い込まれてからの方が、コンパクトに振ることを意識する。それがいい結果につながった」と、2本目の特大アーチを振り返った。

 交流戦明けの第1打席での先制パンチだった。そこに、阿部の強い意志が表れていた。

 阿部

 オールスターで区切って、前半戦、後半戦と考えるケースが多い。でも違うと思う。いい形で後半戦の勝負を迎えるためには、オールスターまでの1カ月が重要だと思う。キッチリした試合をしないといけない。

 4番の先制弾が出れば、チームは勢いに乗っていける。まさに、今でしょ、と言わんばかりに、打つべき時を心得ていた。

 この試合の前まで打率2割7分7厘。交流戦終盤には背中を痛めた影響もあり、調子を落としていた。14日の練習中には、本紙カメラマンに連続写真を撮るように依頼した。その場ですぐさまフォームチェック。「これか。ここが悪かったんだ」。右ひざの開きがわずかに早くなっていたことに気がついた。上体との連動がうまくできていなかった部分を修正し、試合のなかった4日間でその精度を高め、満を持してこの日の試合に臨んでいた。

 マウンド上の中日山井とは、ちょっとしたドラマもあった。2月のWBC合宿。本調子でなく、首脳陣が目もくれなかった1年先輩右腕を、阿部は気遣った。ブルペンの一番端は、カメラマンがすぐ目の前にせり出して投げにくい。落選濃厚な状況で、遠慮してそこを使っていた山井の球を率先して受けに行った。「ナイスボール」と大声で勇気づけた。その時、じっくり見た球筋が、この日の2発に生きたのか。「情けはひとのためならず」のことわざを地でいく形になった。

 阿部のもくろみどおり、巨人は交流戦明けの初戦を盤石のゲーム運びでものにした。「2本とも貴重でした」と原監督も全幅の信頼を置く。4番阿部の存在感が際立つ、巨人の再スタートだった。【竹内智信】

 ▼巨人は12日オリックス戦から5連勝。巨人が前橋の上毛敷島球場で白星は、54年7月25日広島戦のダブルヘッダーで連勝して以来だ。阿部が2回に17号、4回に18号。阿部の1試合2本塁打以上は12年4月13日DeNA戦以来25度目で、1試合で2打席連発は10度目。17号は2ボール2ストライク、18号は1ボール2ストライクから。2ストライク後に2発は04年4月29日ヤクルト戦以来2度目で、2本とも2ストライク後の2打席連発は初めてだ。阿部のストライク別の本塁打数を昨年と比較すると昨年

 13本

 10本

 4本今年

 3本

 7本

 8本

 ※左から0、1、2ストライク時のホームラン数

 2ストライクを取られてからの1発は昨年の4本から8本へ倍増している。