<DeNA5-3阪神>◇22日◇横浜

 初めてお立ち台に上がったDeNA大田阿斗里投手(23)が、初々しい表情でウイニングボールを握り締めた。「今日からプロ野球選手になった大田をよろしくお願いします!」。プロ6年目で念願の初勝利。大入り2万7541人のファンの前で、声を張り上げた。

 最大のピンチで出番は回ってきた。1点リードの5回2死満塁のピンチで救援登板。「ガチガチでしたけど、出来ることは腕を振ることしかない。思い切りストライクゾーンめがけて投げました」。藤井彰をこん身の内角直球で詰まらせて遊ゴロに仕留めた。6回も得点を許さず、チームの本拠地連敗を8で止める勝利に導いた。

 帝京高時代に選抜甲子園で1試合20奪三振を記録した右腕も、プロでは勝てない日々が続いた。08年のデビュー以来、10連敗で勝ち星なし。昨季中継ぎ登板した2試合も結果を出せず、「散々な投球で、野球人生が終わってしまうのではないか」とまで考えた。それでも「野球が好きだから」と悔しさを糧にした。2軍では打者と勝負する原点に戻り、投球だけでなくベースカバーの練習にも取り組んだ。そうやってつかんだマウンドだからこそ、この日も「ああいうピンチでも僕にとってはチャンス」と開き直り、腕を振ることだけに集中できた。

 2年前に結婚し、昨年11月には長男の龍之介君が誕生した。「家族のためにも頑張らなければいけない」と、守るべき存在が大きな力になっている。中畑監督は「一番苦しい中で相手の勢いをピタッと止めてくれた。格好良かったね」と、満面の笑みでたたえた。【佐竹実】

 ▼大田がプロ初勝利を挙げ、デビューからの連敗を10で止めた。デビューから10連敗以上は6人しかおらず、あと1敗で成田(国鉄)松崎(楽天)の11連敗に並ぶワースト記録となるところだった。同じ10連敗で脱出した久保(近鉄)はその後に3年連続2ケタ勝利を挙げるなど通算61勝したが、大田はプロで何勝できるか。