<日本ハム6-5ソフトバンク>◇26日◇東京ドーム

 余韻を味わうように、日本ハム栗山英樹監督(52)は一点を見つめた。延長10回。勝利への花道を小谷野が走ってくる。歓喜の輪に飛び込むと、容赦なくペットボトルの水を浴びせられた。指揮官が迷いなく振ったタクトが、チームに笑顔の花を咲かせた。「みんなの思いが勝ちにつながった。昨年から言ってるけど、感動が推進力だと思っている」。今季初のサヨナラ勝ちに、試合後も興奮するファンの歓声が鳴りやまなかった。

 執念の采配には、心揺さぶる思いがあった。8回2死。パ・リーグ盗塁王独走中の陽岱鋼が、快足を飛ばし二塁へ。ここで監督は迷わずベンチを飛び出した。打席の大引に代えて、代打ホフパワー。1ボール1ストライクとカウントの途中で、異例の奇策に打って出た。「ホフィー(ホフパワー)で勝負すると決めていた」。前夜の同戦では、足を痛めたためとの理由だが、全力疾走を怠った。懲罰的な意味合いも少なからずある途中交代。すぐさま挽回のチャンスを与えた。

 ハートを揺さぶられた助っ人が、思いに応える。左中間へ汚名返上の、一時は2点勝ち越しの1発を放った。「心の準備は出来ていた。常にチームの勝利を信じていたよ」。9回に同点にはされたが、延長10回無死二塁。代打で昨夜、突き指を負うヘッドスライディングで劇的勝利を演出し、途中出場の鶴岡の犠打が失策を誘った。「気合で決めました」と、連夜のラッキーボーイから会心の決勝点が生まれた。5月10日以来、47日ぶりに最下位脱出。「失敗もあったけど、若い子たちにとって意味がある勝利だった」。栗山監督が、逆襲の手応えを確信した特別な一夜になった。【田中彩友美】