<阪神1-7広島>◇14日◇京セラドーム大阪

 阪神マット・マートン外野手(31)がぶち切れた。3回1死満塁。大竹の初球、変化球にバットを止めたが、ハーフスイングをとられた。そして2球目。外角の際どいボールを見送った。しかし、良川球審の右手は上がった。「ストライク!」。この瞬間、マートンが鬼の形相になった。顔をくっつけんばかりに詰め寄り、何かまくしたてるように叫ぶ。良川球審は侮辱行為として退場を宣告した。

 マートン

 グラウンドで起こったことに特に言うことはない。言う必要もない。選手として、望んだ通りのリアクションを取れない時がある。それが今日だ。

 怒りの感情を制御できない。自らもそれを認めた。あわてて一塁側ベンチから和田監督、黒田ヘッドコーチ、スタッフ、選手たちが飛び出したが、制止を振り切って、審判に詰め寄り、罵声を浴びせた。通訳、福留らが落ち着かせるように審判との間に割って入っても、まだ収まらない。何とか一塁側ベンチまで連れて戻った。

 伏線はあった。前日13日の広島戦。初回の打席でフルカウントから外角球を見逃したが、ストライク判定。一塁へ歩こうとして思わず球審を振り返るほど自信を持っていた。この時は怒りを抑えるようにベンチへ下がったが、ついに我慢も限界だった。和田監督は「あの早い回に4番に退場されるのは困る。1度、話さないといけないだろう」と本人との対話を示唆。初回に5点を失ったチームは、4番の退場というダブルパンチで敗戦の一途をたどった。

 昨年は球審の判定に対する不信感や成績不振も相まって、精神的に不安定な状態に陥った。「アイ・ドント・ライク・ノウミサン」発言や、守備を注意したコーチに反抗するトラブルもあった。今季は開幕から安定した働きを見せていたが、後半戦は打率2割を切るなど下降気味。そして、来日4年目で初の退場劇を起こしてしまった。【鈴木忠平】