ヤクルトと野球界を引っ張ってきた“主将”ならではの引退会見だった。宮本慎也内野手(42)が26日、都内の球団事務所で会見し、今季限りでの現役引退を正式表明した。「公の場でしゃべれることですっきりしています。個人的に悔いはない」と約30分間の会見は終始和やかだった。だがヤクルトの後輩への思いを聞かれると、表情を引き締めた。

 宮本

 グッと来る選手は正直いない。決して明るい未来ではないと思っています。みんなが本当に切磋琢磨(せっさたくま)して、プロの一流選手になるんだという気持ちを持たないと、という思いはあります。

 ストイックに野球と向き合ってきた宮本ならではの偽らざるチーム愛だった。「好きで始めた野球が、プロになった瞬間に仕事に変わった。よく『楽しむ』って言うけど、1回も楽しんだことはない」。プロ入り後、当時の野村監督がミーティングで語った「一流の脇役になれ」との言葉に感銘を受けた。「そういう選手にならないと、飯を食っていけないと思ってずっとやってきた」と回想した。

 「何とかしないと」の意識を積み重ねた先に、2000安打など「誰も想像してなかった数字」という記録を残して引退する選手になっていた。だが「仕事として真剣に向き合ってやってこられたのが、誇れるところかなと思います」と、貫いてきた姿勢に胸を張った。だからこそ、引退会見でも素直な言葉が口をついて出た。「若い選手は夢の中でも野球が出てくるぐらい執念を持ってほしい。それでお金もらってるわけですから」と意識の高さの重要さを説いた。

 だが、まだ「選手宮本」の終わりではない。最下位で3位広島と6ゲーム差もあるが「数字的には厳しいかもしれませんが、3位になれるようにみんなで頑張りたい」と力を込めた。「まだ試合が残っているのでホッとはしていません」。勝利のために全力を尽くす。これまでと変わらない姿を、残り試合でも見せていく。【浜本卓也】