<阪神0-3広島>◇30日◇甲子園

 ペナントレースの奇跡へ、そして未来の虎へ。阪神和田豊監督(50)が最後の切り札を出した。タイガース第94代4番として、鳥谷敬内野手(32)を打線の真ん中に置いた。つなぎでなくかえす男になって欲しい狙いで、主将に主砲の肩書を背負わせた。1四球の音なしで機能はしなかったが、この勝負手でチーム強化を推し進める。

 どん底に沈むチーム状況で、指揮官がチームリーダーの可能性に賭けた。本拠地に戻り、メンバー表に書き込んだのは4番鳥谷だった。猛虎の歴史で遊撃手が4番に座ったのは、真弓明信氏(日刊スポーツ評論家)以来、33年ぶり。G戦3連敗後の再スタートに、温めていたカードを切った。

 和田監督

 流れということもあるが、トリの能力からすれば、もっとできるんじゃないか。つなぎ役に徹するところがあるから。かえす方にね。それができる選手だから。

 生え抜きのキャプテンに、チームと自らの現状を打開してほしいというメッセージだった。3番で貴重な役割を担ってきたが、打率2割7分、6本塁打、45打点はやはり物足りない。鳥谷本人にとっても、プロ10年目で初の4番。この日は3打数無安打で、最後の打者になった。新たに課せられた役割を冷静に受け止めた。

 鳥谷

 急に大きいのが出るわけじゃない。(野村は)コースにしっかりと変化球がきていた。明日もがんばります。

 8年ぶりのリーグ制覇は絶望的な状況だが、巨人とCSで再戦する可能性が残されている。歴然とした戦力差をいかに埋めていくか。「4番鳥谷」は1つの手がかりだ。開幕直前に、和田監督は秘蔵プランを明かしていた。「鳥谷?

 なかなか、いいこと聞くねえ。固定できればいいけど長いシーズンだから。理想の打線、点が取れる打線、相手が嫌がる打線。頭の中では3つ」。複数いた4番候補に、鳥谷もいた。勝負強さ、長打、経験。潜在能力も合わせ、タイガースの中心を任せる選手と考えている。

 マートンを3番にする新オーダーは、広島野村の前に機能しなかった。しかし最初の1歩に過ぎない。

 和田監督

 1試合で変えるつもりはない。

 4番鳥谷の継続起用を宣言した。チームの暗いムードは拭えないが、何かを変えなければ先はない。【田口真一郎】

 ▼鳥谷の先発4番は自身初。阪神の遊撃手のスタメン4番は、真弓明信の80年9月7、8日広島戦(広島)以来33年ぶり。これで鳥谷は1番から9番まですべての打順で先発出場を経験。最多は3番の617試合。