<DeNA8-3阪神>◇4日◇横浜

 敗戦の中、はい上がってきた男が意地を見せた。3回、先発鶴に代わって代打で登場したのは阪神狩野恵輔外野手(30)だった。DeNA加賀美の変化球にタイミングを外されながらも、食らいついた。バットの先で拾って中前へ。昨年9月8日、中日戦以来となるヒット。育成契約から復活してきた男らしい、執念の打撃だった。

 「真っすぐを狙っていったけど、上に抜けてきたから。ファームで一緒にやってきた白仁田が頑張ったし、やればできるというのを下の選手に見せないといけない」

 腰の状態が思わしくなかった昨年オフ、支配下から育成契約へと変更された。1軍での実績がある狩野にとっては崖っぷちだった。2軍でアピールを続け、今年7月末に晴れて支配下へと戻った。そして、8月29日に1軍へ。1軍での活躍を目標に汗を流してきた2軍のチームメートたちに頼もしい背中を見せた。

 5回には先頭打者として、つまりながらも左前に運んで反撃ムードを盛り上げた。打棒は健在だった。中堅守備でも無難な動きを見せた。福留、大和が故障している状況で、クライマックスシリーズへ向けての貴重な戦力となりそうだ。

 「打ったのはよかったんですけど、左投手を打たないと。これからの出番を考えると、あそこの左投手を打たないと」

 試合後、2安打の余韻に浸ることなく、狩野は悔しそうに言った。6回、左腕大原の前に右飛にたおれた。現在のチーム構成を考えれば、この先、最も可能性が高いのは右の代打として起用だ。それだけに“左殺し”のイメージを首脳陣にアピールしたかった。自分を知っている。チームを知っている。勝負の秋には、こういう男の力が必要になる。【鈴木忠平】