<中日2-3DeNA>◇16日◇ナゴヤドーム

 初のCS進出へあきらめない。DeNA三浦大輔投手(39)が2本のソロ本塁打を許しながら、6回2失点と粘りの投球。代打を送られた7回に金城龍彦外野手(37)の2点適時打で逆転し、9勝目を手にした。チームは3位広島と6ゲーム差。後がない戦いが続くが、ベテラン右腕の攻めの投球を奇跡のAクラスにつなげる。

 意地の1球だった。1点ビハインドの6回2死。三浦がフルカウントからクラークに投げ込んだのは外角直球。球速は133キロも「スピードは求めてない。キレで勝負。気持ちで押し込んでいけた」と、見逃し三振。前の打席で食らったアーチの雪辱を果たし、直後の逆転劇につなげた。

 生命線のスライダーの制球に苦しみながらも、攻めの姿勢は失わなかった。常に口にするのは「逃げた四球はダメ。逃げたと思われるのが嫌やねん」。大島に許した先頭打者弾も、4回のクラークのソロも3ボール1ストライクから。「追いかける展開にして申し訳なかった」と反省したが、ストライクゾーンで勝負したからこそ、引きずらない。いずれの回も最少失点でしのぎきった。

 被本塁打24本はリーグトップ。その一方で与四球数32はリーグでもっとも少ない。今季6回以上投げての無四球も、この日で8度目。制球力の高さもあるが、ここぞの場面で力を発揮できるのは、決して逃げないからこそ。三浦は「打たれすぎやろ。全然自慢にならない」と言うが、真っ向勝負を挑む姿勢は、こんな数字にも表れる。

 開幕からただ1人ローテーションを守り続ける39歳。周囲はエースと呼ぶが、「マー君(楽天田中)を見てみ。今年(投球回数)200イニングいくだろ。それで1敗もせず、チームに勝ちをつけ続けてる。あれが本当のエース。俺なんかまだまだ。ハナクソですよ」。チームトップの9勝目も、負け数は12。そして白星も約1カ月ぶり。チームを勝たすことが出来なければ、エースにふさわしくないと考える。

 3位広島とは6ゲーム差。CS進出に厳しい状況は続く。それでも「可能性はゼロじゃない。そこにかけて戦っていくだけ」。残り15試合。真のエースになるために、三浦は逃げない。【佐竹実】