<セCSファイナルステージ:巨人3-2広島>◇第1戦◇16日◇東京ドーム

 巨人がCSファイナルステージ初戦で広島に鮮やかな逆転勝ちを決めた。原辰徳監督(55)は短期決戦のために準備した作戦を敢行。先発内海を4回2失点(自責0)で降板させると、強力なリリーフ陣を惜しみなくつぎ込んで勝利をたぐり寄せた。リーグ優勝チームには1勝のアドバンテージがあるため、第1戦を終えて2勝差。26日開幕の日本シリーズ進出へ一気に有利な立場に立った。

 いつもの原監督ではなかった。白い歯を何度も見せ、時には両手を激しく打った。「9月22日に優勝が決まってから、今日は特別な試合でした。久しぶりに緊張感のある試合で、多少、そういうものが顔に出たのかもしれない。修行が足りませんね。僕はポーカーフェースというものができないのかもしれない」と苦笑いした。

 7回、キラに特大の右飛を打たれた場面では、一瞬、勝ち越し本塁打を覚悟して肩を落としもした。「あれは亀井が下から引っ張り下ろしてくれた気がした。0・5秒で立ち直りましたけどね」と笑いに変えた。それほど気持ちの入った試合だった。

 それは采配にも表れた。4回だった。2死満塁となった場面で、64球しか投げていなかった内海に代打を送ることを即決した。「その前の亀井に対して、勝負してきていない気がした。あのまま気持ちよく終わらせたくなかった。ウチの一番いい打者を送ろうと思った」。代打石井で攻めに出た。結果は出なかったものの、そこに原采配の妙が詰まっていた。

 12球団唯一、7年連続で短期決戦を戦う将は言う。「短期決戦は、ビハインドゲームの戦い方が変わってくる。リードしている場面では変わらないけど、追う展開になったら、選手をつぎ込む形が変わってくる。相手、試合の流れに流されてはいけない」。そのために沢村をリリーフとして準備させた。代打の切り札石井も、リーグ優勝の翌日に登録抹消。2軍でバットを振り込ませ、この日に備えさせた。

 「早めに同点まではもっていきたいと思っていた」と言った。裏を返せば、追いつけば負けない自信があったということ。盤石のリリーフ陣が、その自信の源だった。今季12球団トップ、39回の逆転勝ちを重ねてきたチームの支えでもあった。

 64球しか投げていない内海は中3日で第5戦での先発が可能だろう。一方、広島大竹は106球。5戦目には万全で来られない可能性が高い。この日の1勝は単なる1勝ではなく、5戦目の戦いを有利にする勝ち方でもあった。3連敗スタートとなった昨年とは正反対。手ごたえ十分のスタートとなった。【竹内智信】