広島ベンチに「データ」が注入される。広島は4日、来季のコーチスタッフ陣容を発表した。今季まで21年間スコアラーを務めた畝(うね)龍実氏(49)が、1軍投手コーチ兼分析コーチに就任することが決定。投手、野手の垣根を越えて、動作解析の観点からアドバイスを送ることも可能となる。16年ぶりのAクラス入りを果たしたチームに、新たな武器が加わった。

 首脳陣に革命が起こる。1軍投手コーチに抜てきされた畝スコアラーに、兼務で「分析コーチ」の肩書が与えられた。投手コーチが役職を兼務することが異例ならば、分析コーチというポストも極めて特殊な役職である。秋季練習に参加している新コーチは、胸の内を語った。

 「初めてなので戸惑うことが多いけど、選手をよく見てやっていきたいです」

 ユニホームを着るのは、現役を引退した92年以来だ。それから21年間はスコアラー一筋で、相手チームの情報を収集しては丸裸にしてきた。動作解析装置を開発した実績もあり、かつては、キャンプで打撃ケージの真上にカメラを固定する装置も発明したアイデアマン。シーズン中には、不振に陥る選手に映像を用いたアドバイスを求められるなど、人望も厚い。

 松田オーナーは「持っているデータを生かせるように。投手だけではなく、打者にもデータを与えられるようにしたかった」と意図を説明。近年は各チームがデータをより重視する傾向にあり、巨人が他球団に先駆け戦略コーチのポストを確立。投手コーチの比重が重くなるとはいえ、分析コーチとして蓄積してきた「頭脳」にかかる期待は大きい。

 また、緒方打撃コーチが1軍野手総合コーチベンチ担当に配置転換。作戦面や選手起用で、野村監督をサポートする、チーフ格の任務を果たすことになる。これに伴い、高チーフ兼守備走塁コーチが守備走塁コーチとなり、三塁ベースコーチも任される見込み。そして、永田外野守備走塁コーチは打撃コーチ補佐となる。今季限りで現役を引退した菊地原が3軍投手コーチとなり、前任者の青木投手コーチには強化担当の肩書が与えられた。

 16年ぶりのAクラス入りを果たしても、なお革新を求め続ける。次なる目標は23年ぶりのリーグ制覇。来季のコーチ陣容が固まり、また新たな旅が始まる。【鎌田真一郎】

 ◆畝龍実(うね・たつみ)1964年(昭39)6月21日、広島県生まれ。広島工-専大-NTT関東を経て、88年ドラフト3位で広島入団。実働3年で通算7試合に登板(0勝0敗)。92年限りで引退し、スコアラーに転身。現役時代は184センチ、82キロ。左投げ左打ち。