日本野球機構(NPB)と大リーグ機構(MLB)との間で合意直前だった、新ポスティングシステム(入札制度)を含めた日米選手協定の締結が延期されていたことが明るみに出た6日、球界に波紋が広がった。労組プロ野球選手会(嶋基宏会長=楽天)がNPBに対して新協定を締結しないよう申し入れていたことを知らされていなかった選手からは、困惑の声も上がった。新制度を利用してメジャー移籍する可能性がある楽天田中将大投手(25)の動向にも影響を及ぼすだけに、田中に同情する選手もいた。11日に行われるNPBと選手会の事務折衝が注目される。

 選手会の申し入れにより協定締結が延期となったことを受け、現場の選手からは困惑や疑問の声が上がった。選手会は1日にNPBに対し、新協定の再考を促す申し入れ書を提出したが、これは顧問弁護士を中心とした動きであり、知っていた選手は一部に限られていたようだ。

 ロッテの選手会長を務める成瀬は、新協定にメリットがないという考えには同調しつつも「なんでこうなったんだろう」と、事前に連絡がなかったことに困惑を隠さなかった。「選手がかわいそう。田中君も野球人生が変わるかもしれないし選手個々の人生に関わる。現場の人間だからこそ、僕らに説明してほしかった」と、メジャー移籍する可能性のある楽天田中を思いやった。

 西武の選手会長、栗山も「前もって教えてもらっていないと対応にも困りますし、事後報告では許されない話だと思います。情報を共有することも大事ですし、選手会が一体となって議論し、結論を出していかないと」と語った。他の球団選手会長からも「知らなかった」という証言と、疑問の声が相次いだ。選手の同意なく進められたことは、選手会の中で問題になってきそうだ。

 今回の事態で影響を受ける可能性が高い田中はこの日、取材対応があったためKスタ宮城を訪れた。選手会の申し入れにより協定締結が延期されたことについて「知らないので、何も言えません。選手会のことも知らないですから。本当に知らないです」と、淡々と話して球場を後にした。

 選手会の事務局は、正確な状況を把握した上で各球団の選手会長らに事情を説明する予定だったという。松原徹事務局長は新協定について「入札1位しか交渉できない不公平さを感じている。岩隈、中島の悲劇を繰り返したくない」と再考を求める考えを示し「(11日の)事務折衝でNPBの報告を受けてから選手の意思をまとめたい」とした。

 NPBの交渉担当者である伊藤修久法規部長は「1年半にわたり、選手会には交渉の進捗(しんちょく)状況を説明してきた。今後も理解を求めるために努力したい」と話した。まずは11日の事務折衝で話し合われるが、長期化すれば、マー君の去就に大きな影響を及ぼす。