日本野球機構(NPB)と労組プロ野球選手会(嶋基宏会長=楽天)の労使間事務折衝が11日、兵庫県西宮市内で行われ、NPBと大リーグ機構(MLB)との間で合意直前だった新ポスティングシステム(入札制度)を含めた日米選手協定について話し合った。新制度の導入に反対していた選手会側は、12球団の選手の意見を集約した上で一両日中に結論を出す方針を決めた。NPB側は「(選手会の)一定の理解を得られた」とし、近日中に合意する可能性が出てきた。新制度を利用して米移籍の可能性がある楽天田中将大投手(25)のメジャー挑戦の動きも加速しそうだ。

 甲子園に隣接する阪神の球団施設内で行われた事務折衝は、3時間以上に及んだ。NPBはこれまでのMLBとの交渉経過、日米間でほぼ合意している新制度の内容について詳細を説明した。最高額を提示した球団が独占交渉権を得る従来の方式に変更はないが、日本の球団に支払われる額を入札額1位と2位の間とすること。また、契約交渉が破談となった場合にMLB球団に罰金を科す案を導入することなどを説明した。さらに、MLBからこれ以上の譲歩を得ることが極めて難しい状況も伝えて、選手会に理解を求めた。

 NPBの説得に、選手会も理解を示した。1日に新制度の再考を求める要望書を提出するなど、強硬に反対する意思を示していたが、この日は合意に前向きな姿勢が見られた。選手会の松原徹事務局長は「別にNPBと対立しているわけではない。100%納得しているわけじゃないが(NPBの)考えは理解できた。これから12球団の選手会長らに連絡を入れて、一両日中に選手会としての対応を決めたい」と、話した。

 楽天田中が今オフに入札制度で移籍するためには、新制度にできるだけ早く合意することが必要だった。選手会が態度を軟化させたことで、近日中に選手会の了承を得て日米協定を締結できる可能性が高まった。最悪の事態は回避し、NPB選手関係委員会の委員長を務める阪神四藤慶一郎専務は「複数球団と交渉できるような制度にしてほしいという選手会の意向は理解しているが、一方でMLBの考えもある。(選手会の)一定の理解は得たと思う」と、感触を語った。

 ただ、選手会には依然として、慎重な意見もある。選手会の山崎卓也顧問弁護士は「ダルビッシュの入札が12月15日だったはずで、時間はそういう意味ではある」と、交渉を継続する選択肢も視野に入れている。6日に楽天田中と連絡を取ったことも明かし「田中君にとっても、複数球団と交渉できた方がいいし、そういうことは本人にも伝えている。本人の意向も当然確認している」と、話した。

 最終的には現場の選手たちの判断に委ねられることになりそうだ。選手会の松原事務局長は「やっぱり選手ですから、大事なのは」と、選手の意見を尊重する方針を明確にした。