よみがえれ、東出!

 広島東出輝裕内野手(33)が2日、来季の契約更改交渉を行い2000万円減の年俸7000万円で更改した。2月24日の紅白戦で左膝の前十字靱帯(じんたい)断裂の大けがを負い、今季は試合出場なし。来季がみえないと苦悩を明かす本人に松田元オーナー(62)は優勝への必要戦力として1軍復活を熱望した。

 このままでは終わらせない。野村野球の体現者として、松田オーナーは東出復活を熱望していた。

 「監督のやりたい野球を一番理解しているのは、東出。それをグラウンドで体現するのが、東出の役割なんだ」

 16年ぶりのAクラス入り。悲願のクライマックスシリーズ出場を果たし、来季こそ23年ぶりのリーグ制覇へ。今年足りなかったピースこそ東出だとオーナーは確信していた。

 東出の苦悩は深かった。契約更改でも「今年は何もできなかったから」と22%ダウンを受け入れた。2月24日の紅白戦で本塁突入を試みた際に前十字靱帯(じんたい)を切った。本来なら球春到来に心浮き立つころ、車いすに乗り、松葉杖をついて気の遠くなるような復活への道のりを歩き出した。キャリア初の実戦出場なしでプロ15年目を終えた。

 松原3軍チーフトレーナーと二人三脚で、今はショートダッシュやノックを受けるまでに回復した。打撃練習への支障もない。だが万全と言い切る状態には遠いようだ。

 「来季開幕?

 全く分からない。1年間何もしていないんですから。開幕1軍は正直見えないです」

 不在の間に、菊池が23歳7カ月というセ・リーグ二塁手史上最年少でゴールデン・グラブ賞を受賞した。若手の台頭に「危機感は毎年ある。クビになりかけたこともありますし。危機感のない人間はいないと思う」と立場を認識する。左膝に不安を残す今は、まだ体も心も燃えてこない。

 それでも周囲は、復活を待つ。契約交渉にあたった鈴木球団本部長も「ポジションはどこであろうが、戻って1軍にいてほしい。あれだけの経験者なのだから、だれかに何かあったときはそこを守ってほしい。ぼくにとっては大きな補強だと思っている」と断言した。経験者ならではの厳しさと優しさで、再びナインの先頭に立つ日を、チームは待ち望んでいる。【堀まどか】