【ソウル4日=酒井俊作】優勝請負人は石仏の異名を持つ男だった。阪神は当地のホテルで、来季から新加入する呉昇桓(オ・スンファン)投手(31=サムスン)と契約調印式に臨んだ。韓国最多277セーブを誇る守護神は優勝とタイトル奪取を宣言。約1時間の会見ではニコリともせず「マウンドでは笑わない」とポリシーも披露。「石仏」とも呼ばれる鉄仮面が、最速157キロの石直球で日本の強打者たちを震え上がらせる。
背番号22のタテジマに身を包み、ひな壇でポーズを作ったときだ。新天地での第1歩を踏み出した呉昇桓の晴れ舞台。韓国メディアのカメラマンが「笑ってくれよ!」とリクエストしても、わずかに口角を上げるだけ。日韓メディアとの質疑応答でも、ほとんど表情を変えない。数々の修羅場をくぐった勝負師の生きざまがにじみ出ていた。
超高級ホテルで催された調印式のオープニングでは舞台両脇のスクリーンに韓国での勇姿が映された。今秋の韓国シリーズ。劣勢をはね返し、逆転優勝した瞬間もマウンドに仁王立ち。ナインが笑顔ではしゃぐなか、顔色を動かさず、歓喜の輪に入った。呉昇桓にはポリシーがある。「マウンドで笑うことは一生ないと考えていて、それが表情に出ていたのかもしれない。表情をわざと変えようとかはないです。自然にその表情になる」と話した。
試合終盤の緊迫した場面に欠かせないのは、揺るぎない心だ。わずかな気持ちの迷いが表情に出れば18・44メートル先の打者も察知する。駆け引きをいかに制するか。「マウンドに立ったときに考えることが大事。打者をよけず、全力で勝負するだけ」。最速157キロの直球とスライダーを駆使する投球スタイル。抑えても打たれても表情は動かない。韓国では「石仏」とニックネームをつけられるほど、打者を威圧する重要な要素を自然に体現している。
リリーフエースとしての自負がある。韓国メディアから、古巣サムスンの後輩へのメッセージを問われると「1試合1試合、大切ですが、1試合によって心から崩れたらダメ。シーズンがあるから、1試合で崩れたらダメ」と話した。長丁場では、調子の好不調があっても心の振幅をいかに少なくするかが大切だ。韓国球界の第一線で体を張り続けたスーパースターの言葉には重みがあった。
韓国NO・1守護神の栄光を捨て、新天地で挑戦する。すでに心はタテジマの一員だ。「SH
OH」と刺しゅうされた戦闘服に袖を通し、武者震いする。
「日本でも最高の抑え投手になるよう努力するし、阪神が優勝できるよう一生懸命、頑張ります。失敗を最小限に抑えるのが一番の目標です。個人的には、セーブのタイトルをとったらチームもいい成績を残すと思う。個人タイトルにも欲を出したいですね」
球団史上初めて、韓国人の補強に成功した。弱点だったクローザーの座を、強心臓の助っ人に託す。無表情で武骨な男が躍動するほど、V奪回は近づいてくる。
◆呉昇桓(オ・スンファン)1982年7月15日、韓国生まれ。04年ドラフトでサムスンに入団。05年に新人王。5度のセーブ王を獲得。通算444試合で28勝13敗、防御率1・69、同国最多の277セーブ。WBCは3大会連続で韓国代表に選ばれた。178センチ、92キロ。右投げ右打ち。



