完全復活イヤーだ。中日吉見一起投手(29)が懸案だったフォーム改造に着手したことを明かした。沖縄での自主トレを終え福岡・八女合宿をスタートさせた18日に明言。昨年行った右肘の手術の影響で開幕こそ間に合わないが、エース完全復活で新生ドラゴンズを引っ張る決意。

 エースが進化しての復活を狙う。昨年、右肘を手術した吉見は、大きな決意とともに今年を迎えた。「フォーム改造」。ただ普通にマウンドに戻るだけでは物足りない。エースとしての意地が、さらなる進化を狙わせた。今年で3回目となる八女合宿の初日、今年のテーマについて、はっきりと口にした。

 吉見

 今年1年、これでいこうというフォームをつくりたい。けがをして、下半身の大事さを知った。

 ここ2、3年は、自分でもフォームに違和感がありながら、なんとかごまかしてきた。12年まで5年連続2ケタ勝利にも「本当は違う」。心の奥にあったモヤモヤを吹き飛ばすチャンス。けがをマイナスではなく、プラスの方に持っていった。

 吉見

 投げるタイミングが上と下で合ってなかった。なんとか上だけで合わせていて、結果が出ていた。楽な方を選んでいたが、股関節など、下半身をしっかり使ったフォームに変えたい。下からしっかりエネルギーを伝えることが大事なんです。

 八女合宿では「先生」と心酔する鴻江(こうのえ)寿治トレーナー(47)のもと、下半身強化とフォームについて意見交換をする。八女名物である茶畑の丘の頂上から約1キロ下るだけのランニングで下半身をいため、球場では1時間ほどかけて入念なキャッチボールを繰り返した。夜は宿舎で投げる動作のビデオ映像を見ながら、野球以外の数多くのアスリートを手がける鴻江トレーナーと「フォーム談義」を行う。

 新フォームで求めるのはスピードではなく、武器である制球力の向上だ。「コントロールでは、誰にも負けたくない」。精密機械が“バージョンアップ”に、こだわり続けて仕上げるつもりだ。

 右肘の回復は順調で「もう怖さはない」。21日までの短期間だが、14年シーズンを決める日々となる。【浦田由紀夫】

 ◆吉見の経過

 昨年5月7日のヤクルト戦で右肘の違和感を訴え降板。21日に球団が右肘内側靱帯(じんたい)の再建手術を受けると発表。6月4日に名古屋市内の病院でトミー・ジョン手術を受けた。4日後にナゴヤ球場でリハビリを開始。シャドーピッチングやネットスローを経て、9月には約20メートルの距離でキャッチボールを再開。

 ◆八女市

 福岡県南西部の市。人口約6万6000人。1954年(昭29)に市制が施行された。八女茶、電照菊の産地で、伝統工芸品の街としても知られる。スポーツトレーナー鴻江寿治(こうのえ・ひさお)氏が指導する「鴻江キャンプ」には野球選手だけでなく、ソフトボール上野由岐子ら多彩な選手が集まる。