伝説継投の再現か!?

 阪神ドラフト5位山本翔也投手(25)が20日、初めて鳴尾浜のブルペンで投球した。山口高志投手コーチ(63)は高卒1年目から活躍し、現役終盤は左打者へのワンポイントリリーフでフル回転した阪神OB遠山奬志に例えた。野村克也監督が繰り出したウルトラC継投「遠山・葛西スペシャル」。山本にもうっすら記憶がある奇策が、再び見られるかも?

 しれない。

 ドラフト5位左腕の投球姿を見た山口投手コーチが、ファンには懐かしい名前をつぶやいた。「下半身の安定感が遠山に似ている。リリーフ専門やな」。かつて左キラーの中継ぎで活躍した遠山奬志の後継者の誕生?

 かもしれない。

 野村監督が00年、伝説のワンポイント継投を生み出した。左打者に遠山を投入。右打者に対しては中継ぎ右腕葛西にスイッチ。降板した遠山は一塁の守備に就き、左打者が回ってきたら再びマウンドに上がった。巨人との伝統の一戦では松井に遠山、清原に葛西…。左右によって交互に投手と一塁を交代し合って投げる作戦を繰り出した。

 山本は熱烈な虎党の父龍朗さん(57)の影響で、幼いときから阪神の試合を見てきた。「遠山さんはずっと見ていた。遠山、葛西、遠山、葛西のイメージで、葛西さんと記憶に残っている。すごいピッチャーだなと思っていました」。斬新な起用法は、当時12歳の野球少年だった山本の脳裏に焼き付いた。

 プロでは中継ぎ起用を想定している。王子(王子製紙)ではエースとして先発のマウンドに立っていたが「中継ぎでいけるように」と指令を受け、心構えはできている。

 「いい時は20球、調子が悪いと50球ぐらい投げないと肩をつくれなかった。10~20球で肩をつくれるようにしていきたい」

 中継ぎはいつ出番が回ってくるかもわからない。左打者へのワンポイント起用となればさらにスクランブル。だからこそ、瞬時に肩をつくるスキルを身につけるつもりだ。「中継ぎは毎日投げるので」と連投を念頭に、連日のブルペン入りも考えている。昨季、困窮したリリーフ左腕に、帰ってきた遠山が救世主となる。【宮崎えり子】

 ◆山本翔也(やまもと・しょうや)1988年(昭63)10月12日、福井・武生市(現越前市)生まれ。福井(現福井工大福井)では1年夏に甲子園に出場したが登板機会なし。法大ではリーグ戦で通算3試合の登板のみ。同期にDeNA加賀美、1学年上に阪神二神、広島武内、2学年下にはDeNA三嶋がいた。王子製紙(現王子)で3度都市対抗に出場。同社製品の高級ティッシュペーパーを持ち込んで入寮。座右の銘は「人間万事塞翁(さいおう)が馬」。182センチ、90キロ。左投げ左打ち。

 ◆00年遠山の一塁

 00年5月9日中日戦(福井)で、初の「遠山-葛西-遠山」リレーが完成。8回2死から登板した遠山は、9回先頭の右打者吉原を迎えて一塁の守りにつき、マウンドを葛西に譲った。2死三塁となり、打席には左の関川。葛西はベンチへ下がり、遠山が再び登板して二ゴロに抑え、試合終了。同21日横浜戦(横浜)では、遠山と葛西がそれぞれマウンドと一塁を守る奇策も初披露。このシーズン遠山は7試合で一塁の守備を経験。うち6試合で葛西と交互に登板し、5試合でこの2人が「投手」と「一塁手」両方で出場した(4月13日巨人戦のみ遠山から伊藤、ミラー)。同年に遠山が一塁を守った7試合で、阪神は全勝した。