<日本ハム0-5オリックス>◇29日◇札幌ドーム

 日本ハム斎藤佑樹投手(25)が、完全復活にかける勝負の1年の第1歩を踏み出した。オリックス戦で今季初先発。6回9安打4失点と要所で崩れたが、最速145キロをマークするなどまずまずのパフォーマンスを披露。栗山監督が開幕3連戦の大一番で抜てきしたマウンドで、生まれ変わった姿を証明した。2年ぶり勝利はお預けも、収穫ある黒星。奇跡的なカムバック劇の希望の灯はともった。

 すがすがしく、もがいた。斎藤は、真っすぐに悔いた。荒々しく、積み上げた96球。背伸びせず、強がらずに本音を吐き出していった。思い切って、攻めた。「6回4失点じゃ勝つことができない。粘りたかった。悔しいです」。1発あり、四球あり、2死無走者から2度も失点した。キレのあるシュート、フォークを含めた直球系で、力で挑めた内容。結果を求められることが、またステップアップした証しだった。

 長いトンネルから抜け、敷かれた険しいレールだった。本拠地での開幕3連戦の2戦目の起用。開幕戦で勝てばカードの勝ち越し、逆ならば負け越しがかかる。今季序盤の流れを左右する可能性がある分岐点の重要な一戦を、託された。栗山監督が、最終決断した。ルーキー浦野をサプライズ投入する案もあり、実績ある木佐貫も候補にいた。斎藤の選択には、強い思いと理由があった。

 栗山監督

 今年は、チーム全員が必死になってやる1年。それは誰だ、ということを考えた。斎藤佑樹だと。取っても、取られても大事な試合なんだ。

 過酷なリハビリを乗り切り、表舞台に舞い戻った精神力がある。昨季最下位からの雪辱を狙う今季。復権にかけるシンボルになるキーマンと決めた。「オレは信念を貫いた」と迷いなく、コーチ陣にも意見を通した。オープン戦のヤクルト戦の21日。試合前練習後、神宮球場のクラブハウスで1対1で向き合い、伝えた。斎藤も使命の重さを、受け止めた。開幕投手を務めた2年前の12年。2戦目にエース武田勝が控えていた。「だから大胆にいけた」と、プロ初完投勝利の離れ業を遂げた当時を、フラッシュバックさせていた。

 最高のフィナーレはならずも、スイッチが入った。ピンチでも笑顔を見せた斎藤は帰路、嘆いた。「今日、勝つことによって…。本当に悔しかった。本当に悔しい」。勝利を運ぶという先発ローテーションの本能が、よみがえった。最速145キロ。特大弾も浴びたが糸井を力で負かした。フォークで空振り三振も奪い、攻めの姿勢で浴びた9安打。再三のピンチもしのいだ。「自信がなかった」昨年10月の復活登板から、心身ともに変わった。必死にマウンドにしがみつく姿をチームメートやファン、みんなに届けた。勝敗で測れない、付加価値があった。【高山通史】