<巨人12-3阪神>◇30日◇東京ドーム

 「打てる捕手」として新人ながら開幕1軍入りした阪神梅野隆太郎捕手(22=福岡大)は3戦目、通算4打席目にプロ初安打をマークした。6回の代打で巨人大竹から左前打を放った。

 恩返しの初ヒットだ。阪神梅野が東京ドームのスコアボードにともるHランプをみつめた。

 「打てたことはスタートというか、1歩を踏み出せたと思う」

 これまでの2試合同様、この日も6回に代打で声がかかった。開幕戦前に掲げた「リミット2球」。巨人大竹が投じた初球のシュートを宣言通りに三遊間へ運んだ。あまり感情は出さずに喜びは胸の内にとどめた。

 梅野が常に頭に置いている言葉がある。「恩返し」だ。福岡大でもその言葉をミットに刺しゅうし、プロを目指す道のりを共に過ごしてきた。

 「大学のときにプロに行きたいとずっと思っていて、周りに支えてもらったから、その思いを忘れないように入れました」

 ドラフト指名後には弟啓さん(20)が旅行を企画し、職場の保養所に梅野を招いた。「それまでそんなのしたことなかったけれど、一応お祝いですね」。先に社会人になっていた啓さんは照れくさそうに振り返る。それでも「テレビの中にいるのが不思議。やっぱり気になります」と兄の1本を心待ちにしていた。

 小4で母を亡くした後、支えてくれた家族。加えて仲間や恩師。プロの試合では使用しないが開幕3連戦にも「恩返しミット」を持参した。日曜日のデーゲーム。最高の形で恩返しが実現した。「ピッチャーをうまくリードできず後悔しているし悔しい」。初ヒットよりも捕手としての8失点を悔やんだ。チームへの恩返しは始まったばかりだ。【松本航】

 ◆梅野隆太郎(うめの・りゅうたろう)1991年(平3)6月17日、福岡県生まれ。福岡工大城東では2年夏の県大会8強が最高。高校通算25本塁打。福岡大で通算28本塁打。昨年の日米大学野球では全5試合4番。173センチ、80キロ。右投げ右打ち。