<ヤクルト4-7広島>◇22日◇神宮

 広島野村謙二郎監督(47)の怒りの抗議が鮮やかな逆転勝利を呼んだ。4点ビハインドから1点差まで迫った6回1死一塁。1番堂林の三ゴロを川端が二塁送球。セーフに見えるタイミングだったが、判定はアウト。指揮官は「セーフだと思った」と三塁側ベンチを飛び出し、帽子を地面にたたきつけて審判に詰め寄った。判定は覆らず、野村監督は遅延行為により退場を宣告された。

 並々ならぬ勝利への執念にナインが奮起した。試合再開直後、左前打でつないだ2番菊池は「(監督が)去り際に、行けよ、と言ってくれた。絶対に勝つんだと気持ちが入っていた」と振り返った。さらに2死一、二塁から逆転の右中間2点三塁打を決めた丸は「監督が退場覚悟で行ってくれた。僕らもそれを感じていた」と感情を抑えきれなかった。

 今季は先行逃げ切りが大半だったが、4点差を逆転した。野村監督は広報を通じ「大事な場面で、自分なりに引っ込められなかった。皆が奮起してくれて良かった」と感謝した。

 この日は亜大1年生の長男颯一郎が、東都リーグに出場したため、午前中から神宮に駆けつけ、見守っていた。「ヒットを見られて親としてはありがたかった」と優しい笑みを浮かべていた。夜には仕事場で勝負師の顔に戻った後も、再び“愛息”たちの成長に目を細めたことだろう。【佐井陽介】

 ▼野村監督の退場は選手時代の96年9月4日阪神戦、監督での10年8月31日中日戦、11年6月26日中日戦、12年8月31日阪神戦に次いで5度目。通算5度以上の退場は13人目で、セ・リーグで5度はブラウン監督(広島)8度、落合監督(中日)7度に次いで星野監督(中日・阪神)と並び3番目に多い。