<中日3-6阪神>◇6日◇ナゴヤドーム

 ドラフト4位ルーキーがどでかい仕事をやってのけた。阪神梅野隆太郎捕手(22)が、死闘となった中日戦で12回表に代打決勝2ラン。虎はベンチ入り全25選手が出場するなど4時間47分におよんだ総力戦で貴重な白星を呼び込んだ。2位再浮上、さあ首位広島に1ゲーム差や!

 時計の針は午後10時半を回ろうとしていた。もつれにもつれた総力戦。ケリをつけたのはルーキー梅野だった。最終の延長12回無死一塁。和田監督は野手最後の駒として代打起用した。打席に向かう直前、打撃コーチから声を掛けられた。「バントはないからな!

 思い切って、自分のスイングをしてこい」。心は晴れた。腹をくくった。信条のフルスイングをする-。劇的アーチの舞台は整った。

 中日6番手小熊の2球目、真ん中の直球を思い切り振り抜いた。左翼へ。高々と舞う弾道に、敵の野手は誰も動けない。これで決まりだ!

 痛快すぎる2号2ランで勝負を決めた。梅野にとってはプロ初の決勝打だ。

 梅野

 (直前に)良太さんがつないでくれた。自分以外にいなかったので。ファーストストライクをたたけて良かった。代打でなかなか打てる機会が少なかった。やっといい場面で打てた。少しホッとしてます。

 土壇場で豪快なパンチ力が生きた。4月27日DeNA戦(横浜)でプロ1号を放ったばかり。早いカウントで仕留める攻撃的なスタイルは健在だった。代打は出番を読むのが難しい。失敗も生かしながら、代えがたき経験になっている。

 わずか1球、わずか1打席の積み重ねがルーキーの自信につながる。4月19日ヤクルト戦(甲子園)では第一線で活躍してきた石川から3回に中越えの二塁打を放ち、6回には明らかな敬遠気味の四球で歩かされた。左腕エースに実力を認められた瞬間だろう。周囲から見れば「たかが四球」でも梅野にとっては違う。「バットを振れている証拠なのかなと思いますね。カウント2ボールになって勝負を避けているなと感じました」。スイングに自信を持つ。結果をスポンジのように吸収する。だから、1歩ずつ着実に前進できる。

 試合翌日の甲子園クラブハウス。モニターに流れる自らの打撃映像をチェックし、内容を振り返るのが日課だ。配球、投手の癖など気づいた点があればノートに書き込んでいる。アマチュアとは比較にならないほど多くの投手と対戦する。1軍で生き抜くための準備を決して怠らない。

 4時間47分の熱戦に終止符を打ち、再び2位に浮上した。人生初めて真夜中まで野球をした梅野が大仕事を果たした。【酒井俊作】

 ▼ルーキー梅野が延長12回に代打で勝ち越し本塁打。阪神の新人で代打本塁打は、87年5月13日巨人戦(後楽園)で八木が江川から打って以来。ルーキーの代打Vアーチとなると69年6月29日大洋戦(川崎)で田淵が平松から逆転3ランを打って以来、チーム45年ぶり。