<日本ハム7-5中日>◇20日◇札幌ドーム

 自分への怒りは、時間が経過しても、おさまらなかった。日本ハム大谷翔平投手(19)は、プロ入り初めて、定例の会見を拒否した。「勝ててよかったです。力不足でした」。足早にタクシーに乗り込み、ドアを閉めた。

 小さな、ほんのささいな出来事が、リズムを崩した。6回、投球練習を終えると、三塁側ベンチへ小走りで駆けた。直前の攻撃は自身の三邪飛で終了。尻ポケットに入れっぱなしになっていた、走塁用の手袋を置きに戻るためだった。その往復で、歯車が狂った。2回以降1人の走者も許していなかった圧倒的な内容が、一変。1死も奪えずに5失点で降板した。

 プロ入り最速タイの158キロを4度もマーク。フォークもさえ、完封ペースで進んでいた。だが6回は、先頭の代打岩崎を4球で歩かせると、安打と四球で無死満塁とされ、森野、ルナの連続適時打であっという間にKOされた。4点のリードは、わずか10分ほどで消滅した。

 投手での負担を考慮され、7番でオーダーに名を連ねた。1、2打席目は、ともに140キロ直球を捉えたが、打球は野手の正面に飛んだ。3打数無安打。ネクストサークルには極力立たず、凡退後は歩いてベンチへ引き揚げる“省エネ”でマウンドに備えたが、快投の先の、落とし穴にはまった。栗山監督は「生かしてほしい。この経験を宝物にしてほしい」と、責めることはしなかった。

 バックネット裏では米レンジャーズのジョシュ・ボイド・プロスカウト部長が視察していた。メジャーの球団幹部が、大谷を見るために、札幌ドームに足を運んだ。大器の片りんは、見せた。チームも再逆転で勝利した。だが、ただただ、悔しかった。【本間翼】