<中日5-1楽天>◇6日◇ナゴヤドーム

 今、楽天に必要なものは何か。中日に敗れ、11年8月20日以来の借金10となった。危機的な状況に、嶋基宏捕手(29)が声を上げた。プロ入り後初めて一塁で先発出場。打順は今季初の2番に入った。いつもと違うポジションから大きな声を出し、チームを鼓舞した。試合後、波に乗りきれない現状について問われ、新しい気持ちで戦いに挑むべきだと熱く訴えた。

 嶋のまなざしは真っすぐ前を向いていた。ついに借金は2ケタの10。試合後、チームに必要なものを問われると力強く言った。「簡単なことだけど全力で走ったり、ボールに集中すること。攻守交代のダッシュだったり、もう1度フレッシュな気持ちでやらないと、負けは込んでいく」。求めたのは、ひたむきに野球に向かっていく姿勢だった。

 2番一塁で先発出場した。突然の起用で一塁用のミットは村上2軍マネジャーから譲り受けたもの。試合途中に捕手から一塁に守備位置を変更した経験はあるが、スタメンは初だった。慣れない持ち場でも試合前は「当たって砕けろです」と意気込んでいた。その言葉どおり、プレーでチームをもり立てた。2回無死一、二塁。先制を許した直後、中日松井佑の犠打に猛然とチャージをかけた。全力で走り、危機を防ごうとした。

 声でも若いバッテリーを勇気づけた。先発の辛島が得点圏に走者を置くと、大きな身ぶり手ぶりを交え、マウンドと捕手小関に助言を送った。「自分のできることを精いっぱいやるということ。どのポジションでも試合に出られるというのは幸せなことだし、ポジションが違うからといって自分のやることは変わらない」。誰よりも大きな動きと、声を一塁から届けた。

 気迫は打撃にも表れた。6回に藤田の適時打で1点を返し、なお2死二塁。雄太から中前打を放ち、2番としてつなぎの打撃を見せた。後が続かず、得点には結びつかなかったため「点を取らないと勝てないですから」と悔しがった。チームは4月19日以降連勝がない。オセロのように勝ち負けを繰り返し、借金は減らず、波に乗りきれない。現状を打破したいという全員の思いが、嶋の言葉に表れていた。【島根純】