<楽天0-1ヤクルト>◇11日◇コボスタ宮城

 ヤクルト山田哲人内野手(21)の頭には、強く振り抜くことしかなかった。1回表、楽天川井がフルカウントから投じた6球目のフォークを強振し、左中間へ放り込んだ。自身3本目の先頭打者弾となった8号ソロが決勝点になった。「1-0で終わるとは予想してなかった。びっくりですね」と照れた。

 1回表の1番打者は、粘って球数を投げさせるのが常識といわれる。だが、山田の考えは違う。「間違えたら本塁打もあるよ、と思わせたい。それで四球で出る打者を目指したい。そういういやらしい1番を目指したい」。その考えの下地には、幼少期から憧れだった元巨人、横浜の仁志敏久氏(42)の存在があった。

 野球を始めた小学生時代、テレビに映る巨人の「背番号8」に衝撃を受けた。「スイングが強くて、広角に打てるし長打も打てる。すごい1番やなと思った」と、仁志グッズを購入するほどのファンになった。

 昨季途中からヤクルトの1番を任された時、セ・リーグ歴代5位の先頭打者弾24本を誇る、少年時代のヒーローが脳裏に浮かんだ。「理想は仁志さん。この1番は簡単やなと思われると相手投手も投げやすいから」と、思い切り振る信念を貫いてきた。その結果、史上6度目の「1回表の先頭打者弾での1-0勝利」という珍記録につながった。

 小川監督は「あの本塁打が大きかった。山田は言うことがない。いかに継続していけるか」と期待を込めた。チーム上昇の鍵を託された若き1番打者は「もちろん全試合で1番を務めるつもりです」と、力強く宣言した。【浜本卓也】

 ▼ヤクルトは山田の先頭打者本塁打の1点を守って勝利。石川はプロ13年目で初の1-0完封勝利となった。先頭打者本塁打だけの1-0勝利は、01年5月1日日本ハム(打者井出)以来、13年ぶり17度目。初回裏の先頭打者弾が11度(セ5度、パ6度)あり、今回のような初回表はプロ野球史上6度目で、セ・リーグでは69年5月29日大洋(打者重松)以来、45年ぶり3度目と珍しい。