<ソフトバンク1-5DeNA>◇15日◇ヤフオクドーム

 キヨシが変わってきた。DeNA中畑清監督(60)が徹底采配で、チームの連敗を4で止めた。勝ち越した6回、4番筒香に送りバントを指示。8回には今季初のスクイズでダメ押し点を奪った。プロ初完投目前だった山口俊投手(26)も4点リードの9回1死一、二塁で降板させた。育成よりも勝利を優先させる、就任3年目での変化の裏にあるのは何か?

 試合前、中畑監督はブランコの負傷離脱で4番を筒香に託した理由をこう説明した。「5番で結果を出して、不安を取り除いて4番に入れることを俺は選択した。(投手が)右でも左でも、真っすぐにも対応できている。裏付けがあって勝ち取った」。

 それでも1点を追う6回無死一、二塁。2番手森福がマウンドに上がった時点で4番に指示したのは、送りバントだった。「あそこが勝負。まだまだ若い4番。勝ちにいくために自己犠牲を払わないといけない。その気持ちが結果的に逆転につながった」。結果は見逃し三振ながら、その後の3得点の呼び水と説明した。

 これまでならば「今後に向けた力の底上げをしないといけない」(中畑監督)との思いから、バットへの期待に執着してもおかしくなかった。それが一転。「勝ち試合を作る責任がある」と、わずか数時間で育成よりも勝利優先へかじを切った。

 交流戦序盤の5月下旬。中畑監督は1つの決意を口にしていた。「勝つためにやれると思うことは何でもやってみる」。就任1年目は「俺の『最後まであきらめない野球』をチームに浸透させる年」だった。2年目は、打ち勝つ野球で、そのスタイルを示すことは出来た。しかし結果は5位。迎えた3年目。「1点を取りにいって、1点を守る。その策を模索し続けないといけない」と再認識した。

 3点リードの8回に今季初めて試み、成功させたスクイズも、初完投目前の山口を9回1死一、二塁で交代させたのも、この決意から。筒香へのバントサインでは、カウント1-1からバスターに切り替え、策を徹底しきれない問題もあった。しかし、この采配のブレととらえられかねない“変わり身”には、3年目に変化した、中畑監督の1つの信念があった。【佐竹実】