<阪神12-6ヤクルト>◇1日◇倉敷

 虎に張り付く梅雨前線を、活発な梅野台風が吹き飛ばした!

 1回に7点、4回に5点とメリハリの利いた攻撃でドハデに5連敗から大脱出。ルーキー捕手梅野隆太郎(23)が1回に3号2ラン、4回に4号ソロと連発。虎新人では69年田淵幸一以来となる2打席連発を決めた。実に2週間ぶりの勝利で、さあ反攻だ!

 ベンチ前での2度目の祝福は自らヘルメットを取って進んだ。和田監督から始まるハイタッチの連続。そこに頭への「はたき」が加わった。派手な連発を象徴する手荒い祝福。これまでの苦しみを忘れて笑顔で抜けると、ルーキー梅野は拳を握りしめた。

 4回の先頭打者。ヤクルト石川の内角124キロをくるりと腰を回して打ち返した。「追い込まれてからコンパクトに力強く振ることだけを考えていました」。左中間へ2打席連発。阪神ルーキーの2打席連続本塁打は69年の田淵以来45年ぶりだった。偉大な先輩捕手に並ぶ記録をまた打ち立てた。1回には5点を取ってなおも1死一塁。「あんまり打てていなかったので。積極性だけを考えて思いっきりいけました」と左翼席中段に文句なしのアーチをかけた。5月6日中日戦以来の第3号だった。

 鶴岡が出場選手登録を抹消された5月27日以降、22試合のうち13試合でスタメンマスクをかぶった。内訳は4勝8敗1分け。期待された打撃でも打率2割台でノーアーチだった。へこんだとき、今成が支えてくれた。「終わったことは仕方ない。打てる日もあれば打てない日もある。すべてがうまくいく世界じゃない。常に前を向いていけ!」。食事を共にすることも多い先輩の気遣いに「すごくお世話になっています。心強いです」と感謝している。吹っ切れたように、この日は1回7得点の締めと、4回5得点の号砲。チームにとっても6月15日西武戦で緒方が放って以来の1発。誰もが認める7試合、14日ぶり勝利の立役者となった。

 連発を導いたオレンジ色のバットは、福岡大2年時から同じものを使っている。ある日、たまたま手にとったのが、日本通算135本塁打の実績を持つ当時ソフトバンクのオーティズのバットだった。「それを全国大会で使ったらパカパカ打ったんです(9打数5安打)」。プロに入ってもスタイルを変えることなく、助っ人仕様の相棒をぶん回している。

 「点がつながるとベンチの雰囲気もいい。タイガースにとってもいいムードにこれから入っていけるのでは」

 倉敷のお立ち台では借金1からの巻き返しを誓った。2戦連続完封負けから始まった5連敗で借金を抱え、4位に転落。どん底だったチームが、梅野が、倉敷でよみがえった。【松本航】

 ▼ルーキー梅野が2打席連続本塁打。新人の1試合2本塁打は10年5月22日長野(巨人)以来だが、2打席連発は03年5月28日村田(横浜)以来11年ぶり。阪神の新人で1試合2発は80年10月12日中日戦の岡田以来34年ぶりで、2打席連発は69年10月16日中日戦(甲子園)のダブルヘッダー第1試合で4、6回に田淵が20、21号を放って以来45年ぶり。ちなみに田淵はシーズン最終戦の第2試合で22号。1日3発で新人年を締めくくった。