<ロッテ4-3西武>◇10日◇QVCマリン

 完璧な立ち上がりだった。ロッテ成瀬善久投手(28)は風速11メートルの強風にも乱れなかった。セットポジションから低めを丁寧に突いた。キレがあり、135キロでも十分。西武打線を4回1死までパーフェクトに抑えた。「考えすぎると自分の首を絞めてしまう」。開き直り腕を振った。

 発奮材料があった。東日本大震災で被災した千葉・旭市立矢指小の児童と保護者43人を招待していた。旭市からの往復のバスまで自ら用意した。「千葉にも被災地がある」との思いもあって始め、4回目にして初めて登板日に重なった。「今日、来てくれた少年野球をやっている子たちの中から、上を目指す子が出てきてくれたら。そのきっかけを与えられる立場になれるのはうれしいこと」。7勝目を挙げて試合後に対面を果たすと、盛大な拍手で迎えられた。

 お立ち台に上がると、登板時よりも過酷な13メートルの風と雨が吹きつけてきた。その中で「まだ、あきらめてません」と声を張り上げた。「できる限り上を目指したい」。それで勇気づけられる人がいることを実感できたに違いない。【竹内智信】