<阪神3-7広島>◇10日◇京セラドーム大阪

 次こそ勝つ!

 虎のドラフト1位ルーキー岩貞祐太投手(22)がプロ初登板初先発で厳しさを味わった。首位浮上の可能性もあった広島戦。制球が安定しないまま、初回に攻め込まれて3失点した。結局4回5安打4失点(自責3)で黒星デビューとなったが、可能性を秘めた76球を和田監督も評価。次回17日DeNA戦(横浜)で期待に応える。

 ルーキー6人中4番目。岩貞はようやく1軍の舞台を踏んだ。それなのに、感傷に浸ることもできなかった。4回5安打4失点(自責3)。デビュー戦を振り返ると自ら切り捨てた。

 「今日は5点です。100点満点で。自分が4回で代えられたから(逆に)ゲームが崩れなかった」

 浮足立っていた。象徴は4回の先頭、6番梵に右中間を破られたシーンだ。梵が二塁を蹴る。打球をずっと見つめていた岩貞はふと、我に返った。ダッシュで三塁のベースカバーに走るが、間に合わない。送球がそれるのに対応できず、ボールはカメラマン席の上部を直撃。グラウンドルールで進塁権を与え、4点目を失った。

 立ち上がりから今までにない緊張感に襲われた。初回、先頭堂林にいきなり左前打。表情は一層硬くなり、制球が定まらなくなった。「鶴岡さんにも逆球ばかりで迷惑をかけた」。ストライクとボールがはっきりし、苦しくなった。2死一、二塁から5番キラに中越え2点二塁打、6番梵にも適時打を浴び3失点。和田監督も「気持ちいいくらいばらけていたね。初登板は相当緊張したと思う」と苦笑いするしかなかった。2、3回は立ち直りの兆しを見せたものの、4回に再度失点。4点は指揮官の考える勝利のための限度であり、初登板は幕を下ろした。

 2月のキャンプ中に左肘を痛め、実戦復帰は7月2日。オープン戦すらまともに投げたことがなく、1軍のマウンドは未知の世界だった。7日まで同行していた東京遠征中。大学野球部の同期から、復活間近な岩貞に「ちょっと来いよ」と声がかかった。空き時間を使って懐かしい仲間の元を訪れた。7月29日に1軍に合流。それからずっと持ち続けた緊張を一瞬、オフにできた。ただデビュー戦の心理状態は、それで解消されるレベルではなかった。

 「何回も同じミスは繰り返せない。次の機会を頂けるのであれば、それに向けて一生懸命やりたい」

 リベンジの舞台は、17日のDeNA戦(横浜)となりそうだ。黒星デビューで自己採点も激辛。それでも腕を思い切り振れたことなど収穫はあった。リベンジの舞台が横浜となれば、大学で慣れ親しんだ球場だ。本来の姿を見せ、次こそは白星を呼び込みたい。【松本航】

 ◆岩貞祐太(いわさだ・ゆうた)1991年(平3)9月5日、熊本県生まれ。必由館-横浜商大。神奈川大学リーグ戦で2年春の優勝に貢献し最優秀投手賞。同夏は大学日本代表に選出。目標とする投手は先輩の能見。最速148キロ。182センチ、78キロ。左投げ左打ち。