<ヤクルト5-6巨人>◇21日◇神宮

 巨人が粘って、粘って、粘り勝った。8回無死満塁、9回2死一、三塁の大ピンチを耐え、延長11回、片岡治大内野手(31)が、決勝の5号ソロ本塁打を放ち、4時間29分の熱戦にケリをつけた。9回には中堅の長野が、抜ければサヨナラ負けの打球をスーパーキャッチ。井端、橋本ら、再三の好守で失点を防ぎ、首位の座を死守した。

 左翼席からわき起こる自身の応援歌を背に、巨人片岡はロッカールームへと歩を進めた。延長11回。先頭で打席に立ち、決勝の5号ソロ本塁打。「うまく反応して打てた。ホームランが打てて良かった」と一瞬、笑顔をはじけさせたが、すぐに思いを巡らせたのは、「ヤスさん」と慕ってくれる長野のことだった。

 片岡

 長野の思いもあるので。負けられない戦いだった。

 殊勲の男が、口に出すほど、長野の決死のスーパープレーが流れを変えた。9回1死一、二塁。「抜けた…」。右翼の橋本さえ、一瞬、そう思うほどのライナーだった。中堅長野は必死の形相でランニングキャッチ。左手をグッと伸ばして、つかみ取った。直後、右膝の違和感でうずくまった。自力でベンチに戻ると、皆が拍手と称賛で迎えた。勝利を仲間に託し、ベンチに退いた。

 新たな挑戦を求め、片岡は憧れだった巨人のユニホームに袖を通した。「日本一に貢献したいです」。高鳴る気持ちは、野球人としての本能だった。東京ガス時代、同い年で仲が良かった内海はいたが、真っ白な状態での新たな環境。「よろしくお願いします。何かあったら、僕に連絡して下さい」。連絡先を聞き、真っ先に連絡をくれたのが長野だった。

 負ければ首位陥落。体現したのは勝利への執念だった。8回は山口が無死満塁のピンチを防ぎ、9回も2死一、三塁で粘った。守っては、ベテランの井端が身をていして、失点を防御。代打ロペスは一振りで、マシソンも魂のこもった投球で2回を無失点に抑えた。原監督は「粘ったね、ロペスにしてもね。勝つ時は数々、(好プレーが)出るね」とたたえた。

 6月8日からキープする首位の座を守った。不振から2軍に落ち、はい上がった片岡は言った。「チームに迷惑をかけて、申し訳なかった。楽しむじゃないけど、もう1度原点に立ち返ろうと。これからいっぱい取り返せるように頑張ります」。自らが望んだ、心からしびれる戦いが待っている。【久保賢吾】

 ▼巨人は延長11回、片岡の本塁打で勝利。今季の延長戦はヤクルトの1勝9敗2分けに対し、巨人は12勝5敗1分け(このカードでは巨人4勝)。延長戦の勝利は両リーグで巨人が最も多く、巨人が延長戦で12勝以上は96年12勝、02年14勝に次いで3度目。これで片岡は今季の延長戦成績が13打数6安打、打率4割6分2厘。延長戦のV打は4月5日中日戦、6月11日日本ハム戦に次いで3度目。阿部、亀井の2度を抑え、延長戦のV打は片岡がチーム最多だ。