<巨人4-3阪神>◇26日◇東京ドーム

 巨人阿部慎之助捕手(35)が勇気の一振りで、阪神との首位攻防戦の先勝をもたらした。今季4敗を献上している天敵メッセンジャーに対し、4回にプロ通算1000三振を喫するも、3点ビハインドの6回に反撃の15号2ラン。1点を追う9回には先頭で守護神呉昇桓から右翼線二塁打を放ち、村田の同点犠飛、ロペスのサヨナラ打につなげた。敗れれば2位阪神に0・5ゲーム差に迫られていたが、4番の力でひっくり返した。

 阿部に恐れるものは何もなかった。大胆に狙い球を絞り、勇敢にバットを振り抜いた。6回2死二塁。メッセンジャーの初球の外角高め直球を打ち砕く。好感触だったが、152キロの剛速球にスタンドインの自信はない。だが勇気の一振りは左中間スタンドへ反撃のアーチとなった。「メッセはメッチャ良かった。コーナーにビシビシきて、フォークもすごかった。開き直って直球1本を待った。(フォークで)落ちたらごめんなさいでね」。登板6戦中、全敗を喫している天敵から不退転の思いで放った。

 4回に外角低めに沈むフォークに空振り三振を喫していた。通算1000個目。だが恥じる思いは、何一つなかった。試合開始1時間前、遠い少年時代のことを思い起こしていた。

 阿部

 中学生のころは全然、打てなかった。(ポテンヒットが多くて)「カンチャンの阿部」と言われてたぐらい。中3で部活を卒業して高校に入るまでの練習で急に打球が飛ぶようになった。相手捕手にとって不気味に感じる三振もある。落ちる球を持った投手に対しての見送り三振とかね。それを次の打席に生かす。だから三振は怖くない。もうプロで1000個ぐらいしているんじゃない?

 え?

 あと1個なの?

 三振は捨て石ではない。1点を追う9回、先頭で呉の初球のワンバウンドするほどの球を豪快に空振りした。「クソボールだったけど(最近)空振りを思い切りできるようになった。本当は見極めないといけないけど。でも自分の中で根拠付けしないと、振れない。野球をやっていて永遠のテーマ」。間違ってはいない。だから気持ちは次へと向かった。1-1から真ん中の球を右翼線へ運び、二塁打。「普通の人なら三塁打だけどね(笑い)。何とか気持ちで打った」。魂の一振りはサヨナラ勝ちへつながった。

 高橋由が離脱し、台所事情は苦しい。だが窮地に立ってからの巨人の強さを阿部は知っている。「みんなで勝った1勝だった。僕が今から50本塁打を打つのは無理。その中で何ができるか。打率どうこう気にしている暇はない。継続して最後までやる」。阿部は胸を張って、勇敢に戦う。【広重竜太郎】

 ▼通算1000三振=阿部(巨人)

 26日の阪神19回戦(東京ドーム)の4回、メッセンジャーから空振り三振を喫して記録。プロ野球57人目。初三振は01年3月30日阪神1回戦(東京ドーム)で井川から。

 ▼巨人が今季8度目のサヨナラ勝ち。最終回にリードされていた試合を一気にひっくり返した逆転サヨナラは4月29日ヤクルト戦(3-4→5-4)以来で、阪神戦では1-2から李承■の逆転サヨナラ2ランが出た06年4月21日以来、8年ぶりだ。巨人は早ければ30日にマジックが点灯。M点灯の条件は27~30日に巨人が4連勝、広島が4連敗で、29、30日阪神の勝敗次第でM25~M23のいずれかが出る。※■は火ヘンに華