<巨人4-3阪神>◇26日◇東京ドーム

 帰りのバスへと向かう通路に、阪神ランディ・メッセンジャー投手(33)の口笛が響いた。やり切れない思いを、陽気なリズムで押し殺しているようだった。天王山初戦を任され、初回から剛腕がうなった。8回4安打2失点。9奪三振で今季189Kとし、昨季マークした自己最多の183Kを早くも超えた。最後は12勝目が目前で消えるハードラックだったが、つとめて明るく振る舞った。

 「チームを勝ちに導くという意味では、自分の仕事はできたと思います」

 序盤は巨人杉内との息詰まる投手戦。両者ともに完璧な立ち上がりだった。相手が好投するほど燃える助っ人は、味方の先制後にギアをさらに上げた。5回までは内野安打1本に抑える力投。前半だけで7奪三振。150キロを超える直球をコーナーに決めた。

 唯一の失投は6回2死二塁で阿部に浴びた2ラン。152キロが甘く入った。「あの1球だけが失投だったね」。だが1点差とされると、7回、8回はラストスパート。味方の好守にも助けられ、何度もガッツポーズを作った。マウンドにも毎回小走りで上がるなど、気合はいつも以上だった。67年バッキー、88年キーオに並ぶ巨人戦のシーズン5勝は次回にお預け。だがそのときには、気持ちのいい口笛を響かせるはずだ。【池本泰尚】