<DeNA0-3巨人>◇29日◇横浜

 尊敬する師匠に、白星で恩返しした。巨人内海哲也投手(32)が、2年ぶりの完封で4勝目を挙げた。2年目のオフ、グアム自主トレに誘ってくれた尚成との初対戦。待ちに待った勝負を楽しむかのように、マウンドから、打席から、師匠とぶつかり合った。巨人の先発投手の2戦連続完封は、05年6月30日ヤクルト戦の上原、7月1日広島戦の高橋尚以来。2位阪神との2・5差を守った。

 師匠に勝った。内海は初めて味わう感情を、左手の拳に込めた。9回を5安打に抑え、2年ぶりの完封。チームでは9年ぶりの先発投手の2戦連続完封も、うれしかったが、尚成と投げ合って、勝てたことが最高の喜びだった。「本当にお世話になった方。成長した姿を見せられたかな」。師匠がメジャーに移っても、内海の視線の先には、いつも尚成の背中があった。

 登板前日の28日、東京ドームのマウンドを見つめながら、運命を変えたあの日を振り返った。シーズンを4勝(9敗)で終えた2年目のオフ、7歳上の尚成から、声を掛けられた。「一緒にやるか?」。1年目のオフは右も左もわからず、ただ時が過ぎた。「練習の鬼」と呼ばれる内海の源流は、この瞬間だった。

 内海

 もし、誘ってもらってなかったら、今の僕はなかった。僕にとっての永遠の師匠です。

 目を閉じれば、昨日のことのように、思い出がよみがえった。07年のCS、先発かく乱のために、ともにブルペンに入ったこと。投球論について、夜通し語り合ったこと。その全てを重ね、少し“わがまま”を言った。「チーム事情もあるから…。でも、できれば。尚さんより、先に降りたくないです。そして、勝ちたいです」。6回3失点の師匠を横目に、マウンドを守った。

 ともに制球力と投球術が武器だが、投球の基本は直球が持論だった。息を合わせたかのように、ともに最速は142キロ。尚成が坂本ら右の強打者に対して、クロスファイアでえぐれば、内海もブランコの懐を直球で攻めた。大木のようにグッと立ち、メトロノームのようにリズム良く刻んだ27個のアウト。「楽しかった」。師弟関係の2人だけがわかる空気が、横浜の夜空に流れた。【久保賢吾】