<阪神1-4ヤクルト>◇30日◇甲子園

 阪神伊藤隼太外野手(25)は1試合で明暗を味わった。試合後、クラブハウスに引き揚げる顔に笑顔はなし。それでも気持ちを落ち着かせ、はっきりと反省の言葉を並べた。

 「捕らないといけない打球だった。チームに迷惑をかけた。ピッチャーに本当に申し訳ない」

 問題の場面は1点リードされた6回。右翼守備だった。先頭川端から放たれた後方への打球を追いかけジャンプ。グラブに当てはしたものの捕球できなかった(記録は二塁打)。1つのアウトが二塁打となり、その後ヤクルトに3点目を献上。試合後もそのシーンが頭の中を駆けめぐった。

 それでも自分のミスを最大限フォローした。1-3となり、なおも続く2死満塁のピンチ。投手石山の打球は右前方、一塁線上に落ちた。4、5点目を覚悟する場面で、猛チャージをかけ一塁へノーバウンド送球。今季チーム2度目の右ゴロで、ダメ押し点を防いだのだ。

 試合の出だしは最高だった。打撃では2回2死三塁の場面で、セカンドの頭上を越える適時中前打。試合前時点で打率は3割2分9厘。好調に思えるものの、得点圏では19打数3安打の打率1割5分8厘と低迷していた。「チャンスでしたが、いつもと変わらず積極的にいくだけだと考えていました」。結果的に唯一の得点をもたらす一打も伊藤隼だった。

 入団以来、自らが打点を挙げると11連勝だった好データが吹き飛んだ。適時打に、右ゴロ。ビッグプレーでスタンドを沸かせても余韻はなかった。「深く反省して、また明日です」。次なる出番に向けて、前を向いた。【松本航】